宝くじより、橘くんと同じクラスになる確率の方が大きいが、それでも、あまり運は良くない僕は、このクラス替えの結果を目の当たりにして、ガッツポーズをすることが出来るのだろうか…不安と緊張がグルグルしている。せめて、仲良くさせてもらっているバスケ部のメンバーの誰かと同じクラスになりますようにと空を見上げながら、神頼みをする。そのせいで、何度も、通りすがりの自転車にチリンチリンと前を見て歩けと鳴らされてしまった。
「おはよ。月くん」
 偶然、晴陽と遭遇すると思っていなかったので、由真の心臓が跳ねる。
「お…はよ」
「見た? クラス替え」
「まだ…」
「俺も。一緒に見に行くか」
「うん」
 一組から、名簿を見ていくと、晴陽の名前があった。もし、一緒なら、橘、月島で、近くに名前があるはずなのにない。そう簡単に同じクラスになんてなれっこしないと肩を落とし、自分の名前を探し続ける。
 あった。3年2組。誰と一緒なんだろうと眺めていると、榊原くんと牧田さん、そして、修学旅行で同じ班だった杉野さん、同じ写真部の泉太郎くんの名前があって、ホッとするが、心に一つ穴が空いたままだ。
「月くん、何組だった?」
「2組」
 ボッチを回避出来そうなのは嬉しいけれど、本当は、橘くんと同じクラスになりたかった。
 由真から暗い表情を感じ取った晴陽は、何かを言おうとしたが、妨害される。
「晴陽、今年も俺たち同じクラス」
 教室に荷物を置いてきた功祐が晴陽の肩を組む。
「ツッキ―、おはよ!」
「おはよう」
「皆、おはよ!」
 しずくが校門前で出くわした漣と共に来る。
「おぉ! 月くんと一緒じゃん。来夏も漣も一緒! やった!」
 しずくは、喜んだあと、由真の表情を見て、功祐に連れられて行く晴陽の後ろ姿を見て、心に心配の影を落とす。
「よし、漣と月くん。新しい教室行きますよー!」
 バイクのエンジンをかけるかのような声で、漣と由真の手を掴み、引っ張っていく。しずくのパワフルさに、漣と由真は顔を合わせて、苦笑いを浮かべるが、されるがままついていく。