夏休みが終わり、教室には久しぶりに生徒たちの活気が戻ってきた。外はまだ残暑が残っているが、どこか空気が秋めいてきた感じもする。生徒たちは、久々に会う友達と夏休みの思い出話で盛り上がっていた。
「夏休みあっという間だった」
「インターハイ、ベスト8まで残れたの本当嬉しかったよな、晴陽」
功祐が、晴陽の肩を叩く。
「だな」
「ツッキ―も一緒に来れたら良かったのに」
「そうだよな」
登校してきた漣も荷物を置いて、話に参加してくる。
「でも、月くんは、写真部なんだから仕方ないよ」
しずくが、功祐と漣に言う。
インターハイは福岡で開催されるのと、ちょうど写真部の合宿が被っていたので、行くことが出来なかった。
「ウィンター杯、出れるように頑張るから、その時は、見に来て。カメラ持って」
前の席の晴陽が、由真の机に頬杖をついて視線を下から由真に移す。
「…は、い」
晴陽の視線に、由真の心臓がドラムロールのように鳴る。
こんな容姿端麗な橘くんに見つめられたら、誰だって胸がドキドキしてしまう。まだ、至近距離で、橘くんを見るの慣れない。心臓が破裂してしまう…お願いだから、橘くん、僕から、視線を逸らして。誰かに見られているかもしれないから。こんな視線注がれていると知られたら、橘くんたちのファンに反感買うかもしれないからさ。お願いです。あ、自分が逸らせばいいのかと教室のドアに視線を送ると、先生がちょうどドアを開ける。
「静かに、皆席ついてください」
「はーい」
楽しく漕いでいたブランコから降りるかのような声が教室内に響く。助かった。ドキドキは種類関係なしに、冷静な思考を奪ってしまう。「このドキドキめ」と心臓に問いかける。
「修学旅行の部屋割り、班を決めていきたいと思います」
今日は、10月に向けての修学旅行の話が教室で行われている。皆、来る修学旅行に心を躍らせている。クラスが変わり、唯一の友達の泉太郎くんと離れて、友達出来ずじまいで、ぼっちの修学旅行を送ることになるのでは、一層のこと休んでしまいたいと思い、冷や冷やしていたけど、あの時の不安が吹き飛び、今は楽しみで胸がいっぱいだ。
「部屋割りは、もちろん男女別です。カップルで、一緒の部屋は泊まれません。フロアも別で、行き来しているのがバレたら…」
全てを言わずに、その代わりに隕石が落ちたかのような表情を担任の福沢は浮かべる。噂によると、過去にホテルの部屋でカップルがいちゃいちゃしているのが明らかになり、半日、部屋で反省文書かされたというのを噂で聞いたことがある。
「こわい」
この言葉が、クラスの至る所で飛び交っていた。
「だから、みな、気を付けるんだぞ」
「この部屋割りでお願いします」
黒板に書き終えると、福沢は窓際の椅子に座り、後は、生徒たちに委ねた。
男子 2人部屋×1 3人部屋×3 4人部屋×1
女子 2人部屋×1 3人部屋×4 4人部屋×1
「漣、晴陽、ツッキ―! 俺たちちょうど4人だし、4人部屋行こ!」
廊下側の席の功祐が提案する。バスケ部3人のメンツに、俺なんかが混じるのに、違和感を覚えつつも、その言葉が素直に嬉しかった。
「OK!」
「月くん。俺たちと同じ部屋で大丈夫? 功祐がうるさいと思うんだけど…」
「大丈夫! 嬉しい!」
「よし、名前書きに行こ!」
「晴陽、書いて来てー」
功祐の前の席の漣がお願いする。
「分かったー」
「部屋割りが思ったよりスムーズに決まったので、次は班決め。特にこうしろというルールはないのだけど、3人以上になるように! 多すぎるのも駄目です。あと、同じクラスの人と組むように。これも、決まったら書きに来てくださーい」
「橘くん、私と同じ班に!」「功祐くん、一緒に回らない?」「榊原くん、私たちと」
クラスの女子の8割が、バスケ部3人衆を取り合いしている。
「晴陽、漣、功祐人気者だよね」
女子たちの勢いを見て、しずくと由真は目を合わせる。
「バスケ部3人衆に女子たち群がらないでくださーい」
福沢が、椅子に座りながら注意する。それでも、騒ぎが治まる気配はない。福沢は溜息を一つついて、手を叩き、左足を右足の上にかけ、割り込む。
「そんなに班決めが拮抗するようなら、先生決めまーす」
すると、騒然とした空気が急に静かになる。
「俺、月くんと一緒がいい」
晴陽は座って騒ぎを傍観していた由真をチラッと見て口元を綻ばせ、女子たちに宣言する。
やばい、女子たちの反感を買ってしまう。マグマに突き落とされてしまうのではないかと、恐怖に怯えていると、意外な答えが返ってきた。
「月島くんは、橘くんのカメラマンだから、賛成」
「ツッキーは晴陽の何て言えばいいんだろう。ハンバーガーのセットのフライドポテトみたいな役割だから、いいよ!」
え、こんなにあっさりOKしてくれるの…橘くんのことの好きな女の子たち。僕は、橘くんのフライドポテト…?
結局、晴陽、由真、しずく、しずくの仲の良い女子バスケ部のエースである杉野来夏が同じ班になった。
「よろしくね。月くん」
来夏が頬杖をついて、由真に視線を送る。
「よ、よろしく」
来夏がニヤニヤしながら、しずくの顔を見て何かを語りかけている。
え、何? 僕、何かやらかしたと頭の中で軽く混乱に陥る。
「どこ行く?」
しずくが、沖縄の旅行情報誌を捲りながら、3人に聞く。3日目の班での自由行動の予定を組み立てた。
「夏休みあっという間だった」
「インターハイ、ベスト8まで残れたの本当嬉しかったよな、晴陽」
功祐が、晴陽の肩を叩く。
「だな」
「ツッキ―も一緒に来れたら良かったのに」
「そうだよな」
登校してきた漣も荷物を置いて、話に参加してくる。
「でも、月くんは、写真部なんだから仕方ないよ」
しずくが、功祐と漣に言う。
インターハイは福岡で開催されるのと、ちょうど写真部の合宿が被っていたので、行くことが出来なかった。
「ウィンター杯、出れるように頑張るから、その時は、見に来て。カメラ持って」
前の席の晴陽が、由真の机に頬杖をついて視線を下から由真に移す。
「…は、い」
晴陽の視線に、由真の心臓がドラムロールのように鳴る。
こんな容姿端麗な橘くんに見つめられたら、誰だって胸がドキドキしてしまう。まだ、至近距離で、橘くんを見るの慣れない。心臓が破裂してしまう…お願いだから、橘くん、僕から、視線を逸らして。誰かに見られているかもしれないから。こんな視線注がれていると知られたら、橘くんたちのファンに反感買うかもしれないからさ。お願いです。あ、自分が逸らせばいいのかと教室のドアに視線を送ると、先生がちょうどドアを開ける。
「静かに、皆席ついてください」
「はーい」
楽しく漕いでいたブランコから降りるかのような声が教室内に響く。助かった。ドキドキは種類関係なしに、冷静な思考を奪ってしまう。「このドキドキめ」と心臓に問いかける。
「修学旅行の部屋割り、班を決めていきたいと思います」
今日は、10月に向けての修学旅行の話が教室で行われている。皆、来る修学旅行に心を躍らせている。クラスが変わり、唯一の友達の泉太郎くんと離れて、友達出来ずじまいで、ぼっちの修学旅行を送ることになるのでは、一層のこと休んでしまいたいと思い、冷や冷やしていたけど、あの時の不安が吹き飛び、今は楽しみで胸がいっぱいだ。
「部屋割りは、もちろん男女別です。カップルで、一緒の部屋は泊まれません。フロアも別で、行き来しているのがバレたら…」
全てを言わずに、その代わりに隕石が落ちたかのような表情を担任の福沢は浮かべる。噂によると、過去にホテルの部屋でカップルがいちゃいちゃしているのが明らかになり、半日、部屋で反省文書かされたというのを噂で聞いたことがある。
「こわい」
この言葉が、クラスの至る所で飛び交っていた。
「だから、みな、気を付けるんだぞ」
「この部屋割りでお願いします」
黒板に書き終えると、福沢は窓際の椅子に座り、後は、生徒たちに委ねた。
男子 2人部屋×1 3人部屋×3 4人部屋×1
女子 2人部屋×1 3人部屋×4 4人部屋×1
「漣、晴陽、ツッキ―! 俺たちちょうど4人だし、4人部屋行こ!」
廊下側の席の功祐が提案する。バスケ部3人のメンツに、俺なんかが混じるのに、違和感を覚えつつも、その言葉が素直に嬉しかった。
「OK!」
「月くん。俺たちと同じ部屋で大丈夫? 功祐がうるさいと思うんだけど…」
「大丈夫! 嬉しい!」
「よし、名前書きに行こ!」
「晴陽、書いて来てー」
功祐の前の席の漣がお願いする。
「分かったー」
「部屋割りが思ったよりスムーズに決まったので、次は班決め。特にこうしろというルールはないのだけど、3人以上になるように! 多すぎるのも駄目です。あと、同じクラスの人と組むように。これも、決まったら書きに来てくださーい」
「橘くん、私と同じ班に!」「功祐くん、一緒に回らない?」「榊原くん、私たちと」
クラスの女子の8割が、バスケ部3人衆を取り合いしている。
「晴陽、漣、功祐人気者だよね」
女子たちの勢いを見て、しずくと由真は目を合わせる。
「バスケ部3人衆に女子たち群がらないでくださーい」
福沢が、椅子に座りながら注意する。それでも、騒ぎが治まる気配はない。福沢は溜息を一つついて、手を叩き、左足を右足の上にかけ、割り込む。
「そんなに班決めが拮抗するようなら、先生決めまーす」
すると、騒然とした空気が急に静かになる。
「俺、月くんと一緒がいい」
晴陽は座って騒ぎを傍観していた由真をチラッと見て口元を綻ばせ、女子たちに宣言する。
やばい、女子たちの反感を買ってしまう。マグマに突き落とされてしまうのではないかと、恐怖に怯えていると、意外な答えが返ってきた。
「月島くんは、橘くんのカメラマンだから、賛成」
「ツッキーは晴陽の何て言えばいいんだろう。ハンバーガーのセットのフライドポテトみたいな役割だから、いいよ!」
え、こんなにあっさりOKしてくれるの…橘くんのことの好きな女の子たち。僕は、橘くんのフライドポテト…?
結局、晴陽、由真、しずく、しずくの仲の良い女子バスケ部のエースである杉野来夏が同じ班になった。
「よろしくね。月くん」
来夏が頬杖をついて、由真に視線を送る。
「よ、よろしく」
来夏がニヤニヤしながら、しずくの顔を見て何かを語りかけている。
え、何? 僕、何かやらかしたと頭の中で軽く混乱に陥る。
「どこ行く?」
しずくが、沖縄の旅行情報誌を捲りながら、3人に聞く。3日目の班での自由行動の予定を組み立てた。