球技大会が終わって、1週間が経った頃…
「宮元先輩、推薦取り消しだって」
「この前、総合体育館のドアを蹴って、壊したらしい。防犯カメラに映ってたから、管理人さんによって被害届出されて逮捕されたらしい。あと、宮元先輩、薬物に手を染めていたらしく、マスコミが…あと、先輩のお父さんが社長を務める会社の株も暴落している」
「とどめに、この動画も撮っていたんだけど、月くんの許可なしにあの人を貶める証拠として出すのは、ちょっと申し訳ないなぁって」
 ノートパソコンにUSBを差して、「球技大会バス」と書かれたデータをクリックする。そには、この前の球技大会の2年2組と3年2組のバスケの試合の映像が収められていた。
「ごめんな、月くん」
 晴陽は曇った表情を浮かべて、視線を斜め下に逸らしていた。
「ツッキー、試合中もこんなこと…されてたなんて」
 漣が、怒りを言葉に滲ませる。
「正念腐っているな、あの先輩」
 功祐は、腕を組み、動画の宮元に冷ややかな視線を注ぐ。
「まぁ、この動画なくても、あの人は…」
 漣は、パソコンから晴陽に視線を移す。
「だから、この動画を許可なしに撮ってしまったのを直接、月くんに謝ってから消したくて。本当にごめん」
 晴陽は立ち上がり、由真に頭を下げる。
「いいよ。頭上げて。ありがとう」
 でも、この動画誰が撮ったのだろう。橘くんは、試合出ていたから違うとして。カメラを持っているのは、写真部しか考えられない。もしかして、泉太郎くんかな。二階の観客席に、あの時いたから、恐らく…
 晴陽に視線を移すと、頷いていた。
「見て、これ、先輩のお父さんの会社に、マスコミが」
 しずくが、SNSのトレンド一位に上がっているニュースをタップし、皆に見せる。脱税、売春と言う言葉が飛び交っている。
「自業自得だな」
 功祐と漣は、顔を見合わせて呟く。由真は、晴陽の顔を見ると、机に肘をついて外の景色を眺めていた。
 ――ありがとう。意地悪されても、されるがまま受け入れて忘れようとした。いや、忘れられない。今も傷が…心臓を押さえる。でも、負けたくないと思えたのは、友達ができたから、そして、彼らのバスケに対する最後まで諦めない姿勢を見て…強くならなきゃ、立ち上がらなきゃ、じゃなきゃ、一生負け続けると思った。だから、ありがとう、皆。