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「汐里先生、いらっしゃい」
「こんにちは、守さん!」
「あ、満島先生! こっちです」
 廉介が手を挙げる。
「お疲れ様です。高岡先生」
「どうでした?」
「先越されました! でも、上手く行きました。先生の方は?」
「私もOK貰えました」
「おめでとうございます」
「今日は打ち上げですね」
「私も先生に伝えたいことありまして」
「私と悠都くん、付き合うことになったんです。高岡先生の方は、まさか」
「そうです。ユヅと付き合うことに」
「おめでとうございます」
「もうすぐ、学校に報告に行った二人が戻ってくると思うので」
「でも、運命ですよね。運命って、悪い意味もいい意味もあって、よく運命の出会いとか言うけど、本当にあるのかと思っていましたが、案外あるもんですね。運命の出会いって、滅多に起らないものだと思ってましたが、よく考えたら、運命の出会いってたくさんはたしてきたなって。悪い運命ももちろんあるけど、それ以上に良い運命もあるなって。どれだけ運命の出会いを見つけられるかで、人生が楽しいものになるかならないかが決まってしまうのかなって」
「確かにその通りですね」
「私も、最近、今まで生きてきて大きな運命の出会いを見つけました。危うく気づかないで通り過ぎようとしていました」
「俺もです。俺の場合は、気づかされました。運命に二度も出会わせてくれたあの子に」
「来たみたいですね。私たちの」
「運命の相手」
 ぴったり重なり、お互い頬を緩ませる。
「お待たせしました」
「二人ともお腹空いたでしょ」
「はい」「うん」
「お二人さん飲み物何にする?」
「じゃあ、ノンアルのピーチスカッシュ」
「俺は、ジンジャーエールで」
「了解!」

「はいノンアルピーチスカッシュとジンジャーエール」
「ありがとう」「ありがとうございます」
「じゃあ、乾杯しますか」
 廉介が先頭を切る。
「せーの」
 廉介が掛け声をかける。その掛け声に優月、悠都、汐里が乗っかかる。
「乾杯」
 四人にとっては、目まぐるしい一年だった。
 婚約者に浮気され、高校生の女の子と住むことになり、その子が昔飼っていたユズの生まれ変わりで。
 前世の記憶を突如思い出し、まさかのチワワで、一緒に住むことになった人が新しく塾の担当になった先生で、しかも、前世の飼い主で。
 新しい職場に入り、昔の苦い恋を思い出し、久しぶりに恋をした。生まれ変わった君に。
 前世なんか気にしていなかったのに、まさかのボーダーコリーで、好きだった同級生を追って入った塾の先生が、前世の飼い主だったとは。

 人生って何が起こるか分からない。前世の飼い主に人間に生まれ変わって再会できたり…昔飼っていた犬が人間に生まれ変わって、しかも目の前にいたり、そして、付き合うことになったり…
 でも、出会えて良かった。これからもよろしくという気持ちを浮かべて、四人はジョッキをぶつける。