居酒屋花火は、昼間から賑やかだ。
「優月ちゃん、お疲れ!」
「ありがとうございます」
「ユヅちゃん、受験お疲れ様」
「ありがとうございます。こんなに盛大にやってもらって何だか申し訳ないです。あと、貸し切ってもらって」
「いいじゃん。お疲れ様会。優月ちゃんがどれだけ勉強頑張っていたのか俺でも知っているんだから」
「守くん、ありがと!」
「廉介、あいつは仕事だから、仕方ないか。まぁ、仕事終えたら、帰ってくるから飲みな、食べな」
「来たよ、優月!」
 桃那と陽菜乃が手を振りながら、優月の元へ駆け寄る。
「いらっしゃい」
「守くん、こんにちは!」

「優月、結果分かるのって、来週なんだね!」
「ドキドキだね!」
 優月は、「うん」と頷く。
「私、告白した。合格したら付き合って欲しいと」
「きゃぁーー」
 陽菜乃と桃那が顔を見合わせて、甘酸っぱさを声に滲ませている。
「もやもやしたまま、受験したら失敗する。だから、一か八か言った。でも、受験終わってから、冷静に考えれば、相手にプッシャーかけただけだった。相手の気持ち考えずに自分の気持ちを一方に押し付けてしまった。そのせいで、今、顔を合わせるのが、少し気まずい」
「でも、勢いも恋愛において大切だと思う。当たって砕けろ! て言うじゃん」
 桃那が手を上へと広げて、言葉をからだで表現する。
「でも、砕けてしまったら、元に戻るかな。私の心」
 優月は、地に沈んだかのような表情を浮かべる。
「そんなこと真に受けないの」
 横にいる陽菜乃が優月を揺さぶる。
「優月らしいよね。これと思ったら、信じて突っ走る。でも、そんな優月のこと好きだよ」
 桃那が優月に言葉をかける。
「私も」
 陽菜乃も賛同する。
「私たちがいるから。いつでも話聞くから。一人で抱え込んじゃだめよ。砕けてしまったら、直すの手伝うから」
 桃那が立ち上がり、優月を右横から抱きしめる。そして、左にいる陽菜乃もそっとその上から抱きしめる。
「ありがとう!」
 あとは結果を待つだけだ。本当に、高校で二人と出会えて良かった。