お正月明けの空港は、休暇を終えた人々で賑わっている。1月4日の朝、空気は冷たく張り詰め、冬特有の静けさを感じさせる。外に出ると、息が白く曇り、凍えるような寒さが身に染みる中、優月と優弥は、由帆と優弥のお見送りに来ていた。
「お父さん、お母さん、またね」
「優月、体調管理に気をつけて、受験頑張って。何かあったら、電話してきなさい」
「うん」
「優月、会えなくなるの寂しい、離したくないよ。このまま、一緒に帰っちゃう?」
「優弥くん、困ってるよ、優月」
「ごめん、ごめん」
 優弥が廉介を声が聞かれない所に、誘導する。
「伝えたいことがある。君といる時の優月は何だか楽しそうで、私たちには見せない顔をしていたのを見て嫉妬の炎がメラメラと。優月のことを頼む。廉介くん」
「分かりました。お、優弥さん」
 危ない、お父さんと言おうとしていた……。
「以上だ」

 搭乗口に向かうアナウンスが流れ、いよいよ別れの時が近づく。
「じゃあね。今度は、優月が遊びに来る番やね」
「頑張れよ、優月!」
 優弥は、優月の頭に手を置き、鼓舞する。
「うん」
 二人がゆっくりと歩き出し、やがてゲートの向こうへと消えていくと、優月は小さくため息をついた。外に見える飛行機が静かに滑走路を進んでいくのを、ぼんやりと見つめながら溜息をついていた。
 そんな優月と由帆、優弥との姿を見て、優月が、幸せな家庭の元に生まれ変わったのだと思い、何だか嬉しく思った。