🐾
「優月、大型犬に良い思い出ないだろ。大丈夫か」
優月は大型犬を克服するために、廉介には内緒で、元大型犬の前世を持つ悠都を誘って、大型犬カフェに行く約束をして、向かっている最中だ。調べたら、塾から徒歩三分のところにあり、その情報を見つけた時、優月と悠都は二人して驚いた。
「あぁ、うん。でも、悠都くんの前世のボーダーコリーのレオン君は優しくて世話焼きだったのかなって思う。今の悠都君見てたら分かる。」
「私ね、前世で、廉くんのこと庇って、噛まれて死んだんだ。前世の記憶が蘇る前は、散歩中の大型犬を見ても、何とも思わない、むしろ、目を見てしっぽを振って笑顔を振りまいてくれる子を見て可愛いなとなっていた」
「そうか」
「前世の記憶が蘇って良かった、嬉しかったと思うと同時に、たまに心が締め付けられてしまう。あの日、怖かったんだ。足が竦み、今すぐにでも逃げ出したかった。でも、逃げ出せなかった。だから、立ち向かった。負けてしまうのは目に見えて分かっている。でも、私には救われた恩がある。今がその恩を返すときだなって。廉くんは優しいから、私のこと未を挺して守ってくれる。だから、その前に……」
*
「ワン」(廉君、怪我ない?)
今までに感じたことのない痛みで呼吸がしんどくなっている。意識が少しずつ遠のいている。
最後だから、廉くんに感謝を伝える時間だけください。
「ユズ、ごめん。俺が気づかなかったせいで」
「クゥーン」(廉君、今までありがとう)
犬に限らず動物って感情を伝えるバリエーションが少ないから、沢山の感謝を伝えたいのに、伝えられない。これでも、最後、精一杯振り絞ったんだよ……伝わっているか分からないけど、伝わってくれるといいな。
「ユズ、行かないで。お願い。あっ‥‥‥」
廉くん、泣かないで。泣かないで。胸がキューっ痛くなるから。
「はい、ハンカチ」
「やっぱり、悠都くんは世話を甲斐甲斐しく焼いてくれるお兄ちゃんみたい。満島先生の前でもそうだったのかなって」
「前世だと俺の方が、あの子より年上だった。俺、レオンが七才の時、あの子が生まれた。いつも一緒にいた。あの子は飼い主というか妹みたいな存在だった。でも、俺は病気で死んだ」
「そうなんだ」
泊まっていた涙が再び動き出そうとする。
「これ以上泣くなよ。優月」
「ごめん」
「優月、溜め込むなよ。自分の感情を…気持ちを…辛くなるだけだ。優月には、倉城と森島という優しい友達がいるだろ…それに、俺もいる。話は聞いてあげられる。だから、溜め込むな。甘えろ」
「ありがとう。悠都くん」
「もっと頼れ、俺たち同盟組んだんだから」
「今日は、よろしくお願いします。先輩」
優月は、しんみりしてしまった空気を和ま
せようと、ごまをする後輩面をしてみた。
「分かった」
いつもと違う珍しい言葉を吐く優月を見て、
思わず吹き出してしまう。
今では俺の方が年下で、あの時は飼い主と
飼い犬というよりは妹と兄みたいな関係だったけど、今は、塾の先生と生徒の立場なんだよな。
「よし、着いた! 大型犬カフェ。大丈夫?」
「うん」
「もし、何かあったら、俺が守るから」
「あ、ありがと…」
「優月、大型犬に良い思い出ないだろ。大丈夫か」
優月は大型犬を克服するために、廉介には内緒で、元大型犬の前世を持つ悠都を誘って、大型犬カフェに行く約束をして、向かっている最中だ。調べたら、塾から徒歩三分のところにあり、その情報を見つけた時、優月と悠都は二人して驚いた。
「あぁ、うん。でも、悠都くんの前世のボーダーコリーのレオン君は優しくて世話焼きだったのかなって思う。今の悠都君見てたら分かる。」
「私ね、前世で、廉くんのこと庇って、噛まれて死んだんだ。前世の記憶が蘇る前は、散歩中の大型犬を見ても、何とも思わない、むしろ、目を見てしっぽを振って笑顔を振りまいてくれる子を見て可愛いなとなっていた」
「そうか」
「前世の記憶が蘇って良かった、嬉しかったと思うと同時に、たまに心が締め付けられてしまう。あの日、怖かったんだ。足が竦み、今すぐにでも逃げ出したかった。でも、逃げ出せなかった。だから、立ち向かった。負けてしまうのは目に見えて分かっている。でも、私には救われた恩がある。今がその恩を返すときだなって。廉くんは優しいから、私のこと未を挺して守ってくれる。だから、その前に……」
*
「ワン」(廉君、怪我ない?)
今までに感じたことのない痛みで呼吸がしんどくなっている。意識が少しずつ遠のいている。
最後だから、廉くんに感謝を伝える時間だけください。
「ユズ、ごめん。俺が気づかなかったせいで」
「クゥーン」(廉君、今までありがとう)
犬に限らず動物って感情を伝えるバリエーションが少ないから、沢山の感謝を伝えたいのに、伝えられない。これでも、最後、精一杯振り絞ったんだよ……伝わっているか分からないけど、伝わってくれるといいな。
「ユズ、行かないで。お願い。あっ‥‥‥」
廉くん、泣かないで。泣かないで。胸がキューっ痛くなるから。
「はい、ハンカチ」
「やっぱり、悠都くんは世話を甲斐甲斐しく焼いてくれるお兄ちゃんみたい。満島先生の前でもそうだったのかなって」
「前世だと俺の方が、あの子より年上だった。俺、レオンが七才の時、あの子が生まれた。いつも一緒にいた。あの子は飼い主というか妹みたいな存在だった。でも、俺は病気で死んだ」
「そうなんだ」
泊まっていた涙が再び動き出そうとする。
「これ以上泣くなよ。優月」
「ごめん」
「優月、溜め込むなよ。自分の感情を…気持ちを…辛くなるだけだ。優月には、倉城と森島という優しい友達がいるだろ…それに、俺もいる。話は聞いてあげられる。だから、溜め込むな。甘えろ」
「ありがとう。悠都くん」
「もっと頼れ、俺たち同盟組んだんだから」
「今日は、よろしくお願いします。先輩」
優月は、しんみりしてしまった空気を和ま
せようと、ごまをする後輩面をしてみた。
「分かった」
いつもと違う珍しい言葉を吐く優月を見て、
思わず吹き出してしまう。
今では俺の方が年下で、あの時は飼い主と
飼い犬というよりは妹と兄みたいな関係だったけど、今は、塾の先生と生徒の立場なんだよな。
「よし、着いた! 大型犬カフェ。大丈夫?」
「うん」
「もし、何かあったら、俺が守るから」
「あ、ありがと…」