午前中、萌乃が収容されている刑務所に接見に赴き、萌乃に優月に二度と近づくなと釘を刺した後、退院する優月を病院まで迎えに来て、今は、その帰りである。午前中のことを思い出し、上の空状態になってしまっていた。
「廉くんどうした？」
　優月が心配げに顔を覗かせる。
「ごめん。何でもない。帰ろうか」
　かぶりを横に振って、頬を緩める。
　ユヅの顔を見ると、何だか心安らぐんだよな。荒波が凪のように静かになる。
「うん」
　目を細めて、答える優月を見て、思わず視線を逸らし、にやけてしまう。
　ユヅが目を覚まし、本音を打ち明けたことで、心の中にわだかまりが消えて、気持ちが軽くなり、ユヅとの時間を心から楽しめている自分がいる。
「お腹空いたな」
「空いた。守くんのごはん、恋しかったから楽しみ」
「さて、今日は守、何作ってくれているんだろうな」
「何だろう」
　優月と廉介は、目を合わせながら、微笑む。