教室に入ると、真っ先に優月と目が合う。
「おはよ! 悠都くん」
 優月の眼差しに、時間が止まったかのようで、言葉がすぐ出てこなかっら。
「……おはよ。優月、あのさ、今日の放課後、少し話せない?」
「うん、分かった」
「じゃあ」

「悠都くん、お待たせ!」
 悠都は、西門で、優月と待ち合わせをしていた。本当は誰もいない場所で告白しようかと思ったが、それだと、断られるかもしれないし、え…何で? と思われるかもしれない。だから、ひとけが少ない西門で告白することにした。
「大丈夫」
 今までに告白されることはあっても、自分の口から告白するのは初めてだから、緊張で心臓がどうにかなりそうだった。
「大丈夫?」
 優月が心配そうな眼差しを向ける。ここで、諦めたらだめだ。深呼吸をして、勇気を振り絞る。よし。
「俺、優月のこと好きなんだ。付き合って欲しい」
「あ、えっ、あ」
 分かりやすく気が動転している。おにぎりを手で握るとき、熱さで悶えているかのように。
「返事はすぐじゃなくていい。だから考えてくれると嬉しい」
 言葉を続けて紡ぐ。
「うん、分かった」
 迷いながらも、優月は悠都の言葉に頷く。
「ありがとう。じゃあ、また明日」
 口早に告げると、足を走らせて、あの場から少しでも遠ざかりたかった。言ってしまった。動揺している優月の顔を見ると、心臓を鷲掴みされたかのように、苦しくなった。優月を困らせてしまった。まだ、返事を聞くまでは、何もかも決めつけてはいけない。頑張った。告白するのにどれだけ勇気が必要なのか初めて思い知った。「おはよう」「じゃあね」を言うみたいに、簡単に出てこない。喉に詰まったまま…だ。胸が苦しい、痛い。

 こんな気持ち初めてだ。