「お疲れ様です」
「満島先生、お疲れ様です。どうかされましたか?」
 高岡先生が視界に入った途端、心臓のアクセルがかかり始める。人がいる所で伝えるのは、慣れていない私にとっては、ハードルが高すぎるし、生徒や先生に見られて、噂が広がってしまうのは何としてでも避けたいから、教室にいる高岡先生に直撃してから、伝えることにした。
「高岡先生」
 廉介は不思議そうに汐里の顔を見る。
 そんなに見られたら、さらにアクセルが…
「はい」
「好きです。高岡先生のことが」
 よし、言えた。今回は、ちゃんと言葉にできた。でも、相手は、切れる直前の電球のような反応をしている。そうだよね…すぐ、
「はい」ってならないよね……。戸惑うよね……。
「返事はすぐにでなくていいので。それでは失礼します」
 戸を閉めても、鳴り止まない心臓の鼓動。頬に手を当てると、熱い。早く顔の赤さが治まるように、手をうちわのようにして仰いでいた。