真夏の日差しが燦々と照りつける朝、空は雲ひとつない真っ青な色をしている。太陽はすでに高く昇り、地面からは熱気が立ち昇っているのが感じられる。
守の家の車を一日借りて、汐里と悠都を待ち合わせ場所の塾へ迎えに行く。
「お待たせしました」
運転手席窓から顔を覗かせる。
「じゃあ、俺後ろ行きます」
「分かった」
悠都と汐里は、やり取りをしてから、車に乗る。
「私ペーパードライバーなので助かります」
「最近車乗っていなかったので、少し迷惑かけるかもしれないです」
婚約していた時は、車を自分のお金で購入して、ほとんど毎日のように乗っていたのに、別れたあの彼女があの車で浮気相手と行為に及んでいたと知った時は、身の毛がよだつ思いで、視界に入れるのが嫌になり、泣く泣く手放すことを決めた。それ以来、乗る気になれなかった。ユヅを学校に迎えに行くのに、守の車を借りて以来だ。
「分かりました。全然大丈夫です。今日はお願いします」
「はい。承知しました」
遊園地に到着した。駐車場に車を止め、入場ゲートまで歩いて行くまでに、もうすでに、家族連れや友人同士が、楽しみや期待に満ちた笑顔で歩いているのが目に入る。入場ゲートを通り抜けると、目の前にはカラフルなアトラクションが広がり、遊園地全体が活気に満ちている。ジェットコースターの鋭いカーブと急降下を繰り返す音と「キャー」と叫ぶ声が響き渡り、観覧車のゆっくりとした回転が青空に溶け込んでいる。風に乗って、ポップコーンや綿菓子の甘い香りが漂ってくる。
暑さを忘れさせるように、水のアトラクションが涼しげな音を立てている。歓声とともに水しぶきが上がり、びしょ濡れになった子供たちが嬉しそうに駆け回っている。大きな噴水広場では、冷たい水がひとときの涼を提供し、大学生のカップルや大人が足を浸して会話を楽しんでいる。そして、水着姿の小さな子供たちがはしゃいでいるのも視界に入る。
パラソルの下のベンチでは、冷たい飲み物を手に休憩を取っていて、暑さを凌いでいる人たちが視界に入る。アイスクリームやジュースを売っているスタンドには行列ができており、アイスクリームやが次々と売れていく。太陽の光がキラキラと反射するアイスクリームは、まさに夏の味だ。
木陰では、小さな子供たちがシャボン玉を追いかけ、その無邪気な笑い声が風に乗って聞こえてくる。道端の花壇には、ひまわりが青空に向かって堂々と咲き誇り、その鮮やかな黄色が太陽のようにまぶしい。
四人は、途中ご飯休憩を挟みながら、メリーゴーランド、ジェットコースター、コーヒーカップ、シューティングゲーム、謎解きゲームなど沢山楽しんだ。
夕方が近づくにつれて、陽射しは少しずつ和らぎ、長い影が地面に伸び始める。遊園地はまだまだ賑わいを見せているが、一日の疲れが少しずつ感じられる時間だ。涼しい風が吹き始めると、昼間の暑さが和らぎ、心地よい一日の終わりを告げている。
「あのさ……」
出入り口に向かって歩いていた時、ふと、悠都が優月に声をかける。
「うん?」
「名前で呼んでもいい?」
「えっ」
「だめ、だったらいいんだけど」
悠都は視線を斜め右下に逸らす。
「いいよ」
優月の声で視線をもとに戻し、優月の顔に視線を向ける。
「えっ! じゃあ、優月」
おもちゃ買ってあげるよと親に言われたときの子どもみたいな表情で、答える。
「じゃあ、私も。悠都……くん」
悠都ははにかみ、小さく頷く。二人の間に初々しくも夕日のような暖かい空気が漂う。
「あの二人いい感じですね。あぁ、青春いいな」
優月と悠都の後ろ姿を少し離れた所で見守る廉介と汐里。汐里は、二人の姿を羨望の眼差しで見る。
「そうですね。若いのいいですね」
高校生だから、恋愛してもおかしくないよな。ユヅは、昔と違って、人間なんだから好きに恋愛ができる。ユヅは、石橋くんのこと好きなのかな。
「じゃあな。優月」
待ち合わせ場所だった塾に二人を送り届け別れる。
「じゃあね。悠都くん。満島先生も今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとね! 楽しかった」
「ありがとうございました」
優月は手を振り、廉介は頭を下げ、二人の姿が見えなくなるまで車の中から見届ける。
――いつの間に、あの二人、名前で呼び合うようになったんだ。同級生なんだし、そういうことがあってもおかしくないよなと言い聞かせている自分がいた。
「今日、楽しかったな」
「うん。また行きたいな、皆で」
「そうだな」
今日の出来事を振り返りながら、暮色蒼然たる街路の中、帰宅する。
扉に手をかけようとすると、すでに賑わっている声が店内から聞こえてくる。
「ただいま」
五時過ぎというのに、多くのお客さんがすでにお店に入って、テレビに釘付けになっていた。何でだろうと首を傾げながら入る。
「おかえり! 遊園地どうだった?」
腕を組んで、テレビを見ていた守が廉介と優月に気づく。
「楽しかった!」
優月が答える。そして、守から廉介に視線を移す。
「おぉ」
廉介はユヅのふいうちのアイコンタクトにドキッとなる。
「それは良かったな。ところで、今、サッカーの試合やっているよ」
どうりで、ユニフォームを着て、名前入りのタオルを振り回しながら、応援の声が飛びかっていたのだと納得した。守くんは、小学四年生から大学卒業するまで、今でも近所のサッカークラブのコーチを務めているほど、無類のサッカー好きだ。守くんと梨乃ちゃんのお店は、夜のみの営業だが、時々、昼もスポーツ中継がある日は営業していたりする。梨乃ちゃんも、野球とバスケをやっていて、スポーツが好きな二人だからこそ、美味しいご飯を食べながら、ゆっくり試合を楽しんでほしいと、あらかじめ告知をして、観戦者を集っていたりする。スポーツの試合がない時は、テレビを撤去している。テレビに集中しすぎるあまり、ごはんや会話をゆっくりと楽しむ時間をお客さんから奪いたくない理由でそうしているらしい。テレビの音や声がお客さんたちの空間を邪魔しないように、料理がお客さんの一日の疲れを癒し、空腹を満たし、落ち着いた居心地の良い空間でお客さん同士の会話が弾ませ、来てよかった、また来たいと思わせるような時間を提供できればいいなと守君と梨乃ちゃんが話してくれたのを思い出した。
廉くんも、テレビに吸い込まれそうなくらい試合に夢中になっている。昔は、「目悪くなるから、離れてみなよ」とお母さんの麻美さんにしょっちゅう言われていたのを思い出し、あの日の廉くんと重なり頬が緩んでしまう。
「廉介、優月ちゃん。ここ座りな。ごはん用意している間、試合見ときな」
「ありがと」
優月は、荷物を二階に置きにいってから、席に座ったが、廉介は、試合に釘付けのあまり、そのまま座り、応援に全集中している。
「いけるいける‼ 今チャンス! 行け――」
こんなにテンション高く何かに無我夢中な廉くんを見たの今世で初めてな気がする。ジョッキに注がれた烏龍茶を飲みながら思う。いや、初めてだ。
「よっしゃー」
思わず席から立ち上がりガッツポーズをして、常連の一人の銀髪で笑った時に出るえくぼと少し垂れた目が印象的の整備士、沼さんと手を取りながら廉介は喜んでいる。その様子を、優月は、レモンを絞ったとり天を頬張り、目を細めながら見つめる。
昔、犬だった時、廉くんは、クールで、笑ったり、テンション高くなることって、他の人より少ないのかなと思ったこともあるけど、あまり感情を出さないだけで、心の中では笑ったり、喜んだり、テンションが上がっていること分かっていた。わずかだけど、口角が上がって、目が輝いていたから。
でも、久しぶりに、人間として会い前世の記憶がまだ戻っていない時、簡単に笑みを見せないクールな人、話しているだけで体内の温度がマイナス二度ぐらい下がるかのような人だと思ってしまった。冷たい、冷徹な人ではないけど、優しさを冷蔵庫に置き忘れたかのような人に感じていた。前世の飼い主の廉くんだと分かった時は、いや、昔よりクールさが増している、原液を薄めるタイプの飲み物が割るのに必要な水や炭酸の量が少なすぎて「濃い‼」ってなるのと同じくらい濃いと感じてしまった。絵具で青空のような透き通った水色を作りたいのに、誤ってとなりにあった黒色を混ぜってしまったかのような色みたいだと思ったこともある。
でも、クールの濃さが増したぐらいで、優しい所、一緒にいて温かい気持ちになるのは、昔も今も変わらなかった。
いつのまにか試合は終わっていた。あたりは歓喜の声とハイタッチの音で包まれ、日本の勝利でこの試合は幕を閉じた。
守の家の車を一日借りて、汐里と悠都を待ち合わせ場所の塾へ迎えに行く。
「お待たせしました」
運転手席窓から顔を覗かせる。
「じゃあ、俺後ろ行きます」
「分かった」
悠都と汐里は、やり取りをしてから、車に乗る。
「私ペーパードライバーなので助かります」
「最近車乗っていなかったので、少し迷惑かけるかもしれないです」
婚約していた時は、車を自分のお金で購入して、ほとんど毎日のように乗っていたのに、別れたあの彼女があの車で浮気相手と行為に及んでいたと知った時は、身の毛がよだつ思いで、視界に入れるのが嫌になり、泣く泣く手放すことを決めた。それ以来、乗る気になれなかった。ユヅを学校に迎えに行くのに、守の車を借りて以来だ。
「分かりました。全然大丈夫です。今日はお願いします」
「はい。承知しました」
遊園地に到着した。駐車場に車を止め、入場ゲートまで歩いて行くまでに、もうすでに、家族連れや友人同士が、楽しみや期待に満ちた笑顔で歩いているのが目に入る。入場ゲートを通り抜けると、目の前にはカラフルなアトラクションが広がり、遊園地全体が活気に満ちている。ジェットコースターの鋭いカーブと急降下を繰り返す音と「キャー」と叫ぶ声が響き渡り、観覧車のゆっくりとした回転が青空に溶け込んでいる。風に乗って、ポップコーンや綿菓子の甘い香りが漂ってくる。
暑さを忘れさせるように、水のアトラクションが涼しげな音を立てている。歓声とともに水しぶきが上がり、びしょ濡れになった子供たちが嬉しそうに駆け回っている。大きな噴水広場では、冷たい水がひとときの涼を提供し、大学生のカップルや大人が足を浸して会話を楽しんでいる。そして、水着姿の小さな子供たちがはしゃいでいるのも視界に入る。
パラソルの下のベンチでは、冷たい飲み物を手に休憩を取っていて、暑さを凌いでいる人たちが視界に入る。アイスクリームやジュースを売っているスタンドには行列ができており、アイスクリームやが次々と売れていく。太陽の光がキラキラと反射するアイスクリームは、まさに夏の味だ。
木陰では、小さな子供たちがシャボン玉を追いかけ、その無邪気な笑い声が風に乗って聞こえてくる。道端の花壇には、ひまわりが青空に向かって堂々と咲き誇り、その鮮やかな黄色が太陽のようにまぶしい。
四人は、途中ご飯休憩を挟みながら、メリーゴーランド、ジェットコースター、コーヒーカップ、シューティングゲーム、謎解きゲームなど沢山楽しんだ。
夕方が近づくにつれて、陽射しは少しずつ和らぎ、長い影が地面に伸び始める。遊園地はまだまだ賑わいを見せているが、一日の疲れが少しずつ感じられる時間だ。涼しい風が吹き始めると、昼間の暑さが和らぎ、心地よい一日の終わりを告げている。
「あのさ……」
出入り口に向かって歩いていた時、ふと、悠都が優月に声をかける。
「うん?」
「名前で呼んでもいい?」
「えっ」
「だめ、だったらいいんだけど」
悠都は視線を斜め右下に逸らす。
「いいよ」
優月の声で視線をもとに戻し、優月の顔に視線を向ける。
「えっ! じゃあ、優月」
おもちゃ買ってあげるよと親に言われたときの子どもみたいな表情で、答える。
「じゃあ、私も。悠都……くん」
悠都ははにかみ、小さく頷く。二人の間に初々しくも夕日のような暖かい空気が漂う。
「あの二人いい感じですね。あぁ、青春いいな」
優月と悠都の後ろ姿を少し離れた所で見守る廉介と汐里。汐里は、二人の姿を羨望の眼差しで見る。
「そうですね。若いのいいですね」
高校生だから、恋愛してもおかしくないよな。ユヅは、昔と違って、人間なんだから好きに恋愛ができる。ユヅは、石橋くんのこと好きなのかな。
「じゃあな。優月」
待ち合わせ場所だった塾に二人を送り届け別れる。
「じゃあね。悠都くん。満島先生も今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとね! 楽しかった」
「ありがとうございました」
優月は手を振り、廉介は頭を下げ、二人の姿が見えなくなるまで車の中から見届ける。
――いつの間に、あの二人、名前で呼び合うようになったんだ。同級生なんだし、そういうことがあってもおかしくないよなと言い聞かせている自分がいた。
「今日、楽しかったな」
「うん。また行きたいな、皆で」
「そうだな」
今日の出来事を振り返りながら、暮色蒼然たる街路の中、帰宅する。
扉に手をかけようとすると、すでに賑わっている声が店内から聞こえてくる。
「ただいま」
五時過ぎというのに、多くのお客さんがすでにお店に入って、テレビに釘付けになっていた。何でだろうと首を傾げながら入る。
「おかえり! 遊園地どうだった?」
腕を組んで、テレビを見ていた守が廉介と優月に気づく。
「楽しかった!」
優月が答える。そして、守から廉介に視線を移す。
「おぉ」
廉介はユヅのふいうちのアイコンタクトにドキッとなる。
「それは良かったな。ところで、今、サッカーの試合やっているよ」
どうりで、ユニフォームを着て、名前入りのタオルを振り回しながら、応援の声が飛びかっていたのだと納得した。守くんは、小学四年生から大学卒業するまで、今でも近所のサッカークラブのコーチを務めているほど、無類のサッカー好きだ。守くんと梨乃ちゃんのお店は、夜のみの営業だが、時々、昼もスポーツ中継がある日は営業していたりする。梨乃ちゃんも、野球とバスケをやっていて、スポーツが好きな二人だからこそ、美味しいご飯を食べながら、ゆっくり試合を楽しんでほしいと、あらかじめ告知をして、観戦者を集っていたりする。スポーツの試合がない時は、テレビを撤去している。テレビに集中しすぎるあまり、ごはんや会話をゆっくりと楽しむ時間をお客さんから奪いたくない理由でそうしているらしい。テレビの音や声がお客さんたちの空間を邪魔しないように、料理がお客さんの一日の疲れを癒し、空腹を満たし、落ち着いた居心地の良い空間でお客さん同士の会話が弾ませ、来てよかった、また来たいと思わせるような時間を提供できればいいなと守君と梨乃ちゃんが話してくれたのを思い出した。
廉くんも、テレビに吸い込まれそうなくらい試合に夢中になっている。昔は、「目悪くなるから、離れてみなよ」とお母さんの麻美さんにしょっちゅう言われていたのを思い出し、あの日の廉くんと重なり頬が緩んでしまう。
「廉介、優月ちゃん。ここ座りな。ごはん用意している間、試合見ときな」
「ありがと」
優月は、荷物を二階に置きにいってから、席に座ったが、廉介は、試合に釘付けのあまり、そのまま座り、応援に全集中している。
「いけるいける‼ 今チャンス! 行け――」
こんなにテンション高く何かに無我夢中な廉くんを見たの今世で初めてな気がする。ジョッキに注がれた烏龍茶を飲みながら思う。いや、初めてだ。
「よっしゃー」
思わず席から立ち上がりガッツポーズをして、常連の一人の銀髪で笑った時に出るえくぼと少し垂れた目が印象的の整備士、沼さんと手を取りながら廉介は喜んでいる。その様子を、優月は、レモンを絞ったとり天を頬張り、目を細めながら見つめる。
昔、犬だった時、廉くんは、クールで、笑ったり、テンション高くなることって、他の人より少ないのかなと思ったこともあるけど、あまり感情を出さないだけで、心の中では笑ったり、喜んだり、テンションが上がっていること分かっていた。わずかだけど、口角が上がって、目が輝いていたから。
でも、久しぶりに、人間として会い前世の記憶がまだ戻っていない時、簡単に笑みを見せないクールな人、話しているだけで体内の温度がマイナス二度ぐらい下がるかのような人だと思ってしまった。冷たい、冷徹な人ではないけど、優しさを冷蔵庫に置き忘れたかのような人に感じていた。前世の飼い主の廉くんだと分かった時は、いや、昔よりクールさが増している、原液を薄めるタイプの飲み物が割るのに必要な水や炭酸の量が少なすぎて「濃い‼」ってなるのと同じくらい濃いと感じてしまった。絵具で青空のような透き通った水色を作りたいのに、誤ってとなりにあった黒色を混ぜってしまったかのような色みたいだと思ったこともある。
でも、クールの濃さが増したぐらいで、優しい所、一緒にいて温かい気持ちになるのは、昔も今も変わらなかった。
いつのまにか試合は終わっていた。あたりは歓喜の声とハイタッチの音で包まれ、日本の勝利でこの試合は幕を閉じた。