「一緒に帰ろ。ユヅ」
「うん」
 優月の頬を伝う涙を廉介は拭い、頭を撫でて愛おしそうに微笑む。

「ただいま」
 廉介がドアをあける。そして、優月は少し遅れて申し訳なさそうな表情をしながら、お店に入る。
「おぉ! 優月ちゃん」
「守君、梨乃ちゃん。ごめん。また二階に住んでもいいかな」
「何で謝るのよ。もちろんいいに決まっているじゃない?」
 梨乃は、守に「ね?」と同意を求める。
「うん、もちろんいいに決まっているじゃん」
「ありがとう」
「廉介、優月ちゃん、後十五分ぐらいで晩ご飯できるから食べにおいで」
 守が二人に告げる。
「優月、先、荷物、上に置いてきな」
 梨乃が優月を先に上に行かせる。
「うん」
 靴を脱いで、下駄箱に入れて、優月は二階に荷物を置きにあがる。
「廉介、無事仲直りしたみたいだな。今度、優月ちゃん悲しませたら許さないからな。梨乃が蹴りをお見舞いさせるからな」
 梨乃は咳払いとともに一瞬にして表情と声色を真剣味おびたものへと変えた。
「廉介くんだめよ。女の子泣かせたら」
「あ、はい」
 大粒の涙で顔を濡らしているユヅの姿を見て、心がギュっと締め付けられた。俺があぁさせてしまった。苦しくて泣かせてしまうのは、もう二度としないと誓った。あの子は、笑っている顔の方が、何千倍も輝いている。 嬉しい時、感動している時に流す涙は大丈夫。でも、心を傷つけて、苦しみの雨にさらすのだけは、だめだ。傘を差してくれる人がいなけれな、その悲しみは雨が止むまで消えないから。