「優月じゃあね」
「うん、また明日!」
校門まで、陽菜乃と桃那と一緒に出てきた。優月はこれから守に迎えに来てもらうため、二人と別れて、校門前で待っていた。
今日、何曜日だろう。木曜日、いや、体育の授業あったから水曜日だ。塾があるのは明日だ。明日の授業で高岡先生、最後だ。嬉しいはずなのに、寂しい。短い間だったけど、楽しいこともあった。でも、その思いは、前世のことをなかなか打ち明けられない辛さが包み込み、私の心を蝕んでいった。明日我慢すれば、後は忘れるだけ。エビングハウスの忘却曲線によると、人間の記憶は一日で約七十%忘れるというから、受験勉強を忙しくすれば、そのうちに消えてなくなるだろう。でも……。
守くんが来るまで、ノートでも見て待とうと。
「あっ」
ノートを手にし、視線を駐車場に向ける。
守くんの車だ。でも、中から出てきたのは守くんじゃない。え、何で、いるの……。心の準備、まだ出来ていない。言葉も用意できていないのに。
お互い目が合うが、すぐさま優月が逸らし、会釈をして、早歩きで去ろうとする。
廉介は、無視されたことにバラの棘で心を刺されたかのように傷つき、痛みで狼狽えてしまう。でも、優月が遠くに行ってしまう前に勇気を出して声をかける。
「待って。今日は守に頼まれて迎えに来た。あぁ、いや、違う。半分本当で半分嘘。ごめん。俺が守に頼んで君のこと迎えに来た」
優月は、背負っているリュックサックの紐を強く握りしめる。
「俺、ずっと会いたかったんだ。生まれ変わって人間になってないかなって…ずっと思っていた。最初聞いたときは混乱の渦で前が見えなくなるほどびっくりした…でも、君が嘘をつくような人間だと思えない。渦が消えて最初に現れた感情は嬉しいだった。本当にごめん。傷つけて。でも、俺はこれからも一緒に暮らしたいんだ。君がいなきゃ俺は嫌なんだ。君を手放したくない。一緒に帰ろう」
自分の溜め込んだ気持ちを吐き出した廉介は、はぁはぁ…と息切れをしながら、天を仰ぎ、どっと熱くなってしまった目の温度を抑えようとする。
廉介の真っ直ぐな言葉と声、表情…何もかもが優月の心に深く温かくささる。
「…はい」
あまり心の内を明かさず、顔にもはっきり出さない廉介が、会いに来てくれて、必死に言葉を紡いでくれた。
あんな感情的な廉くん、あの時以来…。
「ユヅ、おいで」
優月は走って、廉介の胸に勢いよく飛び込み、廉介は受け止め、抱きしめる。
「……廉くん。ごめんなさい」
人間になって初めて、飼い主の名前を口にする。ずっと人間の言葉話せればいいのにと思っていた。でも、来世で夢が叶った。
嬉しさで涙が止まらない。
「うん、また明日!」
校門まで、陽菜乃と桃那と一緒に出てきた。優月はこれから守に迎えに来てもらうため、二人と別れて、校門前で待っていた。
今日、何曜日だろう。木曜日、いや、体育の授業あったから水曜日だ。塾があるのは明日だ。明日の授業で高岡先生、最後だ。嬉しいはずなのに、寂しい。短い間だったけど、楽しいこともあった。でも、その思いは、前世のことをなかなか打ち明けられない辛さが包み込み、私の心を蝕んでいった。明日我慢すれば、後は忘れるだけ。エビングハウスの忘却曲線によると、人間の記憶は一日で約七十%忘れるというから、受験勉強を忙しくすれば、そのうちに消えてなくなるだろう。でも……。
守くんが来るまで、ノートでも見て待とうと。
「あっ」
ノートを手にし、視線を駐車場に向ける。
守くんの車だ。でも、中から出てきたのは守くんじゃない。え、何で、いるの……。心の準備、まだ出来ていない。言葉も用意できていないのに。
お互い目が合うが、すぐさま優月が逸らし、会釈をして、早歩きで去ろうとする。
廉介は、無視されたことにバラの棘で心を刺されたかのように傷つき、痛みで狼狽えてしまう。でも、優月が遠くに行ってしまう前に勇気を出して声をかける。
「待って。今日は守に頼まれて迎えに来た。あぁ、いや、違う。半分本当で半分嘘。ごめん。俺が守に頼んで君のこと迎えに来た」
優月は、背負っているリュックサックの紐を強く握りしめる。
「俺、ずっと会いたかったんだ。生まれ変わって人間になってないかなって…ずっと思っていた。最初聞いたときは混乱の渦で前が見えなくなるほどびっくりした…でも、君が嘘をつくような人間だと思えない。渦が消えて最初に現れた感情は嬉しいだった。本当にごめん。傷つけて。でも、俺はこれからも一緒に暮らしたいんだ。君がいなきゃ俺は嫌なんだ。君を手放したくない。一緒に帰ろう」
自分の溜め込んだ気持ちを吐き出した廉介は、はぁはぁ…と息切れをしながら、天を仰ぎ、どっと熱くなってしまった目の温度を抑えようとする。
廉介の真っ直ぐな言葉と声、表情…何もかもが優月の心に深く温かくささる。
「…はい」
あまり心の内を明かさず、顔にもはっきり出さない廉介が、会いに来てくれて、必死に言葉を紡いでくれた。
あんな感情的な廉くん、あの時以来…。
「ユヅ、おいで」
優月は走って、廉介の胸に勢いよく飛び込み、廉介は受け止め、抱きしめる。
「……廉くん。ごめんなさい」
人間になって初めて、飼い主の名前を口にする。ずっと人間の言葉話せればいいのにと思っていた。でも、来世で夢が叶った。
嬉しさで涙が止まらない。