🐾
「優月、溜息ついてどうした?」
桃那が問いかけても、お弁当の卵焼きを挟んだまま上の空状態の優月を見て、桃那と陽菜乃は顔を見合わせて、心配そうな表情を浮かべる。二人は、頷いて、優月の目の前で手を振って、「おーい」と呼びかける。
「卵焼きも、食べてもらえなくて可哀想だよ」
陽菜乃が卵焼きに同情する。
「あっ、はぁ、うん、はぁ…」
「優月、体調悪い?」
「勉強のしすぎ?」
「私、溜息ついていた?」
溜息ついたことにまったく気づいていなく、戸惑っている優月。
「ついていた。かなり」
「溜息の最終形態?」
陽菜乃の言葉に? が浮かぶが、それほど無意識に溜息ついていたんだなと猛省する。
「ごめん」
「何かあったん? 相談乗るよ」
桃那が心配そうな目で見つめる。
「大丈夫! ありがとう!」
迷惑をかけたくなかった優月はすぐさま笑顔を浮かべて、何もなかったかのように振舞う。
「今日はさぁ、部活ないし、パフェ食べに行こう! 今、イチゴパフェが期間限定で出ているから」
陽菜乃が何かを思いついたかのように目をぱっと見開き提案する。
「いいね! 甘いもの食べて元気出しな、優月」
桃那が陽菜乃の意見に乗っかる。優月は隠したが、親友の桃那と陽菜乃には優月が何か悩んでいるのが見え見えだった。
「う、うん」
「ごゆっくり」
運ばれた来たパフェの壮大さに三人は見惚れていた。
「美味しそう」
「平日だから、スムーズには入れたけど、土日はかなり人多いらしい」
連れて来た陽菜乃が店内を見渡しながら言う。
「ラッキーだね」
桃那が、優月に視線を向ける。
「だね」
美味しそう。
「写真、撮ろ!」
桃那が机の上に置いていたスマホの写真アプリをタップし、写真を撮り始める。それに乗じて、陽菜乃も優月もスマホを手にして、パフェの撮影会が始まった。
優月は自分のイチゴパフェの写真一枚と、陽菜乃が頼んだ白桃のパフェと桃那が頼んだハチミツレモンパフェと一緒に一枚、計二枚の写真を撮る。ちなみに陽菜乃、桃那は、インスタにあげるように映えを意識しているようだ。優月はアイスが溶けないうちに、パフェ用の先が小さくなっているスプーンを手にし、パフェにスプーンを近づけようとすると、
「優月あと少し待って」
スプーンを持ったままの手をどうしようか優月は迷う。カメラを内にして、桃那の「撮るよ」という掛け声で、写真を撮る。
「桃那、あとでグループラインに送っといて」
陽菜乃が桃那にお願いする。
「はいよ。次はと…」
陽菜乃がスマホからスプーンに持ち替え、CMで食べ物を宣伝するかのようなポーズをする。その様子を桃那がスマホで撮る。
「OK!」
「あぁ、ごめん。優月、食べな」
陽菜乃が、ちゃんと二人の撮影会が終わるのを待っていた優月に合図を出す。
「うん。ありがとう」
「おいし! 今まで食べたパフェの中で一番美味しいかも」
イチゴの甘酸っぱさ、ソフトクリームの濃厚なミルクの味わいが口の中に広がり幸せだ。奥へと掘り進めていくと、ラズベリーが練り込まれたバニラアイスが出てくる。これもまたして美味しい。そして、ジュレが視界に入る。口に運んで、正体を探る。紅茶の味がする。甘い続きだったから、口をラストスパートに向けて整えることが出来る。それと同時に楽しい時間が終わることを示している。
「優月、本当、甘い物好きだね」
「うん。甘いもの食べている時って別空間にいるような幸せな気分になるんだよね」
陽菜乃と桃那は、顔を合わせて頷くと、話の本題に入る。
「私たちは優月の味方だから」
「えっ」
陽菜乃の言葉に思わず目が点になる。
「優月って、案外おっちょこちょいで、よく躓くじゃん。躓いてもいいから、こける前に私たちが全力で支えにいくからさ、壁にぶちあたったり、上手くいかなくて何かにつまずいてこけそうと思ったら、『あ、こけそう』っていってほしい。一人でコケに行かないで」
桃那が真剣な表情で優月に本心を伝える。
「私も桃那も、優月に助けられたこと沢山あるからさ。私たちも優月が元気ないと、優月をそんな気持ちにさせる奴、物、何か分かんないけどさ、憎くなる」
陽菜乃も桃那に続いて本心を打ち明ける。二人の想いがじんわりと心に沁みる。それと同時に目頭までもが熱くなっていく。
「ごめん。二人とも。ありがとう」
「失敗を恐れずに私たちとことん躓こう!」
桃那が先陣を切って掛け声をかける。
「おぉ!」
「そして、こけて大けがしないように……駆けつけよう!」
「おぉ!」
はたからしたら、ヤバい女子高校生の決起集会に見えるが、本人たちはいたってまじめだ。むしろ、パフェを目の前にして絆が深まった。
「あぁ、アイス溶ける」
桃那が頼んだパフェのアイスたち
が汗をかき始めていることに気づく。
「食べよ」
優月はパフェに目を落とすが、ほとんど食べつくしていたことに気づき悲しい顔をする。あぁ…思わず声が漏れる。
「一口食べな」
陽菜乃と桃那は自分のパフェを優月の前に差し出す。
パフェを食べ終え、お店を後にする。
「美味しかったね。また来よ! 三人で」
「うん! 陽菜乃、桃那」
「うん?」
横にいる二人は首を傾げる。
「ありがとう。大好き」
そして、抱き寄せる。
「急にどうしたん?」
桃那は優月の突然の行動に目を丸くする。
「愛の告白?」
陽菜乃が優月に突っ込みを入れる。
「陽菜乃!」
「でも」
陽菜乃と桃那は顔を見合わせて、
「私たちも大好きだよ」
と伝えると、優月は、分かりやすく照れていた。
パフェの店前でいちゃついている女子高校生って周りの人に見られてしまっているけどいいや。後ろめたいという気持ちなどないし、二人は自慢できる親友だから。
傷つく怖さが減った気がする。二人のおかげで。まだ、どうしたいか決まったわけではない。
でも、もう一度、会いたい。逃げてばっかりじゃだめだ。
「優月、溜息ついてどうした?」
桃那が問いかけても、お弁当の卵焼きを挟んだまま上の空状態の優月を見て、桃那と陽菜乃は顔を見合わせて、心配そうな表情を浮かべる。二人は、頷いて、優月の目の前で手を振って、「おーい」と呼びかける。
「卵焼きも、食べてもらえなくて可哀想だよ」
陽菜乃が卵焼きに同情する。
「あっ、はぁ、うん、はぁ…」
「優月、体調悪い?」
「勉強のしすぎ?」
「私、溜息ついていた?」
溜息ついたことにまったく気づいていなく、戸惑っている優月。
「ついていた。かなり」
「溜息の最終形態?」
陽菜乃の言葉に? が浮かぶが、それほど無意識に溜息ついていたんだなと猛省する。
「ごめん」
「何かあったん? 相談乗るよ」
桃那が心配そうな目で見つめる。
「大丈夫! ありがとう!」
迷惑をかけたくなかった優月はすぐさま笑顔を浮かべて、何もなかったかのように振舞う。
「今日はさぁ、部活ないし、パフェ食べに行こう! 今、イチゴパフェが期間限定で出ているから」
陽菜乃が何かを思いついたかのように目をぱっと見開き提案する。
「いいね! 甘いもの食べて元気出しな、優月」
桃那が陽菜乃の意見に乗っかる。優月は隠したが、親友の桃那と陽菜乃には優月が何か悩んでいるのが見え見えだった。
「う、うん」
「ごゆっくり」
運ばれた来たパフェの壮大さに三人は見惚れていた。
「美味しそう」
「平日だから、スムーズには入れたけど、土日はかなり人多いらしい」
連れて来た陽菜乃が店内を見渡しながら言う。
「ラッキーだね」
桃那が、優月に視線を向ける。
「だね」
美味しそう。
「写真、撮ろ!」
桃那が机の上に置いていたスマホの写真アプリをタップし、写真を撮り始める。それに乗じて、陽菜乃も優月もスマホを手にして、パフェの撮影会が始まった。
優月は自分のイチゴパフェの写真一枚と、陽菜乃が頼んだ白桃のパフェと桃那が頼んだハチミツレモンパフェと一緒に一枚、計二枚の写真を撮る。ちなみに陽菜乃、桃那は、インスタにあげるように映えを意識しているようだ。優月はアイスが溶けないうちに、パフェ用の先が小さくなっているスプーンを手にし、パフェにスプーンを近づけようとすると、
「優月あと少し待って」
スプーンを持ったままの手をどうしようか優月は迷う。カメラを内にして、桃那の「撮るよ」という掛け声で、写真を撮る。
「桃那、あとでグループラインに送っといて」
陽菜乃が桃那にお願いする。
「はいよ。次はと…」
陽菜乃がスマホからスプーンに持ち替え、CMで食べ物を宣伝するかのようなポーズをする。その様子を桃那がスマホで撮る。
「OK!」
「あぁ、ごめん。優月、食べな」
陽菜乃が、ちゃんと二人の撮影会が終わるのを待っていた優月に合図を出す。
「うん。ありがとう」
「おいし! 今まで食べたパフェの中で一番美味しいかも」
イチゴの甘酸っぱさ、ソフトクリームの濃厚なミルクの味わいが口の中に広がり幸せだ。奥へと掘り進めていくと、ラズベリーが練り込まれたバニラアイスが出てくる。これもまたして美味しい。そして、ジュレが視界に入る。口に運んで、正体を探る。紅茶の味がする。甘い続きだったから、口をラストスパートに向けて整えることが出来る。それと同時に楽しい時間が終わることを示している。
「優月、本当、甘い物好きだね」
「うん。甘いもの食べている時って別空間にいるような幸せな気分になるんだよね」
陽菜乃と桃那は、顔を合わせて頷くと、話の本題に入る。
「私たちは優月の味方だから」
「えっ」
陽菜乃の言葉に思わず目が点になる。
「優月って、案外おっちょこちょいで、よく躓くじゃん。躓いてもいいから、こける前に私たちが全力で支えにいくからさ、壁にぶちあたったり、上手くいかなくて何かにつまずいてこけそうと思ったら、『あ、こけそう』っていってほしい。一人でコケに行かないで」
桃那が真剣な表情で優月に本心を伝える。
「私も桃那も、優月に助けられたこと沢山あるからさ。私たちも優月が元気ないと、優月をそんな気持ちにさせる奴、物、何か分かんないけどさ、憎くなる」
陽菜乃も桃那に続いて本心を打ち明ける。二人の想いがじんわりと心に沁みる。それと同時に目頭までもが熱くなっていく。
「ごめん。二人とも。ありがとう」
「失敗を恐れずに私たちとことん躓こう!」
桃那が先陣を切って掛け声をかける。
「おぉ!」
「そして、こけて大けがしないように……駆けつけよう!」
「おぉ!」
はたからしたら、ヤバい女子高校生の決起集会に見えるが、本人たちはいたってまじめだ。むしろ、パフェを目の前にして絆が深まった。
「あぁ、アイス溶ける」
桃那が頼んだパフェのアイスたち
が汗をかき始めていることに気づく。
「食べよ」
優月はパフェに目を落とすが、ほとんど食べつくしていたことに気づき悲しい顔をする。あぁ…思わず声が漏れる。
「一口食べな」
陽菜乃と桃那は自分のパフェを優月の前に差し出す。
パフェを食べ終え、お店を後にする。
「美味しかったね。また来よ! 三人で」
「うん! 陽菜乃、桃那」
「うん?」
横にいる二人は首を傾げる。
「ありがとう。大好き」
そして、抱き寄せる。
「急にどうしたん?」
桃那は優月の突然の行動に目を丸くする。
「愛の告白?」
陽菜乃が優月に突っ込みを入れる。
「陽菜乃!」
「でも」
陽菜乃と桃那は顔を見合わせて、
「私たちも大好きだよ」
と伝えると、優月は、分かりやすく照れていた。
パフェの店前でいちゃついている女子高校生って周りの人に見られてしまっているけどいいや。後ろめたいという気持ちなどないし、二人は自慢できる親友だから。
傷つく怖さが減った気がする。二人のおかげで。まだ、どうしたいか決まったわけではない。
でも、もう一度、会いたい。逃げてばっかりじゃだめだ。