その言葉を聞いて、全身の血液が顔に集中しだすと、カアッと熱くなる。

「……先輩はまた、そうやって……」

 恥ずかしくなって俯くと、「だってほんとのことだから」と先輩は言う。

 〝矢野くんのことが好きだ〟

 公園で告白されたときのことを思い出す。

 あれから一ヶ月は過ぎているのに、まだ自分の気持ちを知ることができない。

「……先輩は、どうやって気づいたんですか」
「ん?」
「その……俺のことを好きって……」

 自分で説明していて恥ずかしくなっていると、「うーん、そうだなあ」と先輩は少し空を見上げながら話し始める。

「前にも話したと思うけど、生徒会メンバーとして少しずつ共有する時間が増えて、その中で矢野くんのことを知ってくうちに気になりだして。もっと一緒にいたいなとか矢野くんの笑ってる姿もっと見たいなとか、矢野くんが笑ってると俺も嬉しいとか。そういう風に思うようになって、気づいたら好きになってたんだよね。ほんと、恋って不思議だよね」

 いつのまにか先輩は顔を下げて俺を見つめていた。

 その眼差しがあまりにも優しくて、先輩の目が俺に〝好き〟って言っているみたいだった。

「そう、だったんですね」
「どう。参考になった?」
「俺、今まで人を好きになったことがなくて、だから好きとかも正直よく分からないんですけど……」

 人を好きになる瞬間のことを話で聞いてみてもあんまりピンときたりしないけれど、誰かと一緒にいて楽しいとか嬉しいとか、そういう感情は分かる。

「でも……もう少し考えてみたら、答えが出るような気がします。だから、もう少しだけ待っていてください」

 ──俺は、夏樹先輩と一緒にいて楽しいし、先輩が笑うと嬉しくなる。

 それには、きっと理由があって。

「分かった。待ってるね」

 先輩は嬉しそうに微笑んだ。

 その顔を見て、俺も安心する。

「じゃあそろそろ冷えてきたし室内に入ろっか」

 俺を見る眼差しは、とても優しかったんだ。