「おまえら寄ってたかって卑怯だぞ!!」

 みんなに指をさしながら文句をついていく先輩に、

「卑怯とは心外だなぁ。俺たちは、武田が素直になるように促してただけなのに」
「どこがだよっ! 山崎…っ、おまえが一番煽ってんだからな!」
「えー、ひどいなぁ」

 結局、クリスマスの話題はどこへ消えたのやら。

「じゃあそんなこと言うやつはしーらない」

 フイッと顔を逸らした会長が、「みんなそろそろ帰ろうか」と、話を強制的に中断させる。

 それに一人だけ悔しそうなのが武田先輩で、「ぐっ…」と顔を歪めたあと、

「ちょっと待てよ!」
「何?」
「いやっ、だから、クリスマス……」
「はっきり言ってくれないとわからないよ」

 モゴモゴと口籠る武田先輩に、会長が優しく諭すと、「あーもうっ、だから!」と声を荒げてこう言った。

「せっかくのクリスマスイブなんだし、みんなで慰労会でもしねーか?!」

 クリスマスに慰労会……なんとも組み合わせがミスマッチだけど。

「──ぷっ」

 突然、漏れた笑み。
 それは、会長と夏樹先輩のもので。

「ちょっ、おまえら……人がせっかく真剣に言ったのに……!」

 武田先輩は恥ずかしそうに二人に詰め寄った。

「いやだって、やっと言ったなぁと思ったらクリスマスイブに慰労会って……」

 と、会長がクスクスと笑ったあと、

「右に同じく」

 夏樹先輩が笑いを堪えていた。

「お前ら俺の気持ちを弄びやがってー…!!」

 と、武田先輩は会長の胸ぐらを軽く掴む。

「ごめんごめん。あまりにも武田が素直じゃないから、ちょっとからかいたくなっちゃってさ」
「山﨑、ほんっと俺にだけ優しくねえよな。笑ってんのに目がマジだし。当たり強えし。絶対ドSだろ」
「そんなこと言ってると会長命令で武田にだけ雑務与えてもいいんだよ?」
「それはマジで勘弁してくれ……!」

 結局、武田先輩が先に折れて勝敗が決まる。
 さすがの武田先輩でも言葉で会長を言い負かすのは難しいようだった。

「そういうわけで、これから武田の傷心の身を慰めるクリスマスイブにしようと思うんだけど、みんな来れそう?」

 会長がそう言うと、「なんだよ傷心の身って……」と武田先輩はブツブツ文句を言っているようだったが、会長に直接は言えないようだった。
 よっぽどクリスマスイブに一人で過ごしたくないみたいだ。

「俺、大丈夫ですよ」