「先輩は、冗談とか結構言うんだけど実はすごく優しくて後輩思いだし。俺の女装を知ったときも軽蔑しないでくれたし、むしろ受け止めてくれたっていうか、意外と頼り甲斐あるし真っ直ぐな言葉とか、思ったことは口にするとか……」

 先輩のことを思い出すと、次から次へと言葉は溢れてくる。でもやっぱり一番は……

「とにかく先輩は、かっこいいなって思うんだよね!」

 ──全肯定してくれる優しさもあって、真っ直ぐ言葉を伝えてくれるかっこよさもある。

「ああ、夏樹先輩。矢野が常日頃女装してるって知ってるんだっけ」
「うん……て、その言い方だと俺が毎日のように女装してるってことになるんだけど」
「ほぼ合ってるじゃん」
「いや全然! たまにだから! 自信がなくなったときだけ!」
「そんな焦らなくたって知ってるよ」

 焦る俺をみて、ケタケタ笑う鳥羽。

「ほんっと鳥羽ってやつは性格ねじれねじれだよね」
「なに、ねじれねじれって」
「そのまんま」
「いや全然、分からないから」

 ひとしきり鳥羽が笑ったあと、

「ていうか、矢野は先輩のことかっこいいって思うんだ」
「……え? そりゃあまぁ……」
「ふーん、そうなんだ」
「な、なに……」
「先輩のこと話すときの矢野って楽しそうだよね」
「え? あ、まぁ……」
「もしかして先輩のこと好きなの?」
「……は?」

 一瞬、何を言われたのか理解できなくて、頭の中が真っ白に抜け落ちた。

「だから、先輩のこと好きなの?」

 もう一度鳥羽に言われて、動揺した俺は、

「えっ? ちょ、はあ……?! なに、言って……」
「なにって気になったこと。矢野、夏樹先輩とは一番仲良さそうだし」
「そりゃ仲は良いけど……普通だよ、普通! 俺と先輩はただの先輩後輩としてだから!」

 誤解されないようにしっかりと言い切ったあと。

 〝矢野くんのことが、好きだ〟

 告白の言葉が頭に浮かんできて、ブワっと顔が熱くなる。