***
「あーあ。彼女ほしい……!」
お昼休み、柳木がそんなことを漏らすと、呆れたように鳥羽が「何突然」と困惑する。
「だってさぁ、もうすぐでクリスマスじゃん? クリスマスって言ったら恋人と過ごすのが定番じゃん。それなのに俺、彼女いないからさぁ……」
淡々と一人でしゃべり続けたあと、柳木は「はあ…」とため息をつく。
「べつにみんながみんなそうってわけじゃないんじゃない?」
鳥羽が珍しく柳木をフォローする。
「でもさぁ、大抵の人たちがそうだろ?」
「なんでそう決めつけるの」
「だって部活の先輩や同級生は恋人いるって言うし」
「部活のみんなに恋人いるって聞いたわけじゃないんでしょ」
鳥羽の言い分を聞いても「そうだけどさぁ…」と柳木は不満げな顔をする。
学校近くに共学校もあるし、バイトだってできるわけだから外で恋人を作る人もいる。ただ、簡単には女子と出会えなかったりもする。
「柳木がなにを不満に思ってるのか知らないけど、俺も矢野も恋人いないから。みんな仲間ってことで寂しくないじゃん」
「……ちょっと、なんで俺の名前まで持ち出すの」
「だって恋人いないでしょ」
「……いない、けど」
「それともなに。この学校に恋人でもいる?」
鳥羽が突然そんなことを言うものだから、俺は変に意識してしまった。
「っいない、から……! ばばば、バカじゃないの?!」
「なんでそんな慌てるわけ。まさかほんとに恋人い…」
「ないから!」
「それともなつ…」
「違うから!」
先手を打って言葉を遮った。
鳥羽、今確実に〝夏樹先輩〟って言おうとした。
「え、なに。矢野、恋人いるの?」
「いないから!」
と柳木に俺は釘を刺した。
「ふーん? じゃあみんな仲間か!」
それを信じた柳木は、嬉しそうにニカッと笑う。