「でもなんで、そんなこと聞いてきたの?」
「えっ? …あっ、いや……武田先輩がクリスマスに一人は虚しいって言ってたので。先輩はどうなのかなぁと個人的に気になってしまって」
言い訳をしているみたいで恥ずかしくなった俺は、マフラーに顔を少し埋める。
「ああ、そういうことね。俺は元々クリスマスとかイベントとか特にこだわりなかったし、むしろ友達と騒いでる方が楽しいっていうか気が楽なところはあったかな」
なんだか夏樹先輩らしい答えが返ってきて、なるほどと納得しそうになった矢先。
「まあでも、それは今までの場合だけどね」
「……え? 今までの場合?」
「うん。それは過去の話。今はちょっと違うかな」
「違うって、どんなふうに……」
そうっと顔を上げると、優しい眼差しでこちらを見ていた先輩と目が合う。
「さっきも言ったけど、好きな子と過ごしたいって今の俺なら思うかな」
──〝矢野くんのこと、好きだ〟
つまり好きな子ってのは俺のことで……
──ドキッ
「そ、そうなん、ですね!」
緊張して口の中が乾いて言葉につまった。
そんな俺を見て先輩はなぜか嬉しそう微笑む。
「矢野くんはクリスマスどうするの?」
「いや、俺は特には……」
予定もないし、恋人もいないし。
「ふーん、そっか。じゃあ女装する予定は?」
「だからありませんって!」
「なーんだ。もしかしたらクリスマスはするかもって思ってサンタコスの矢野くんを期待してたのに、ちょっと残念」
「……そもそもサンタコスって何ですか」
「サンタクロースのミニスカバージョン。あと帽子とブーツとか。いやでも、ミニスカは他のやつには見せたくねーなぁ」
なんて勝手に一人で妄想を繰り広げている先輩に、
「その前に俺はサンタコスなんてしませんから!」
赤面しながら言ったのは言うまでもなかった。