〝女の子のこと〟の言葉で俺はピンとくる。

「……えっ、それって俺のことがバレ……」
「あー、それは大丈夫。矢野くんのことは気づいてないから」
「そ、そうなんですか?」
「うん、だから安心して。ただね、タケが俺に好きな子がいるとか会いに行ったとか同級生に言いふらしてるみたいで。それで立花にも色々聞かれてさぁ……」

 そう言ったあと、先輩は「あ、立花ってのはクラスメイトなんだけど」と補足してくれる。

「……あの、聞かれたって一体なにを」
「んー、本気なのかとかテスト終わりに会いに行ったのかとか」

 テスト終わり……て、ああ、あのときか。確か武田先輩たちと一緒だったっけ。

「あーあと、告白しないのかって言われたかな」
「こここ、告白?!」
「うん。まぁ、みんな矢野くんのこと気づかず女の子だと思ってるからそうやってあれこれ言ってくるんだろうけどね」
「あ、ああ、なるほど……」
「でも、もう告白はしたよね」

 と、先輩が言うから、俺の心臓は落ち着く暇がない。

「……そ、そうですね。されましたね」

 恥ずかしくなって顔が熱くなる。

「でも、まだ返事ができずに、すみません」
「大丈夫だよ。矢野くんが考えてくれてるってことだから」

 目が合うと、先輩は優しく微笑む。

 俺は、この顔にどこか安心してしまうんだ。

「……先輩は、クリスマスに恋人と過ごしたいって思いますか?」
「俺? その前に恋人いないけど」
「や、えっと、例えばです! 先輩に恋人がいるとして、どうなのかなぁと……」

 あれ、俺何を聞いているんだろう。そんなことべつに知る必要もないのに。

「そりゃあもちろん好きな子と過ごしたいって思うかなぁ」
「そ、そうなんですね」

 先輩でも、そんなふうに思うんだ。