「あ、えっと、何でしたっけ?」
「夏樹とは路線が同じなんだったよね」
「はい。でも、俺が来るときは先輩いませんでしたよ」
「そっかぁ、じゃあ二人とも寝坊でもしてるのかなぁ」
「武田先輩もですか?」
「さっきから連絡してるんだけど、全く返事がないんだよねぇ」
寝坊……武田先輩や夏樹先輩ならあり得なくもないかも。武田先輩は特に朝早く起きるのが面倒くさいからって二度寝しちゃってそう。
うんうん、絶対そうだ。
「全くもう。後輩より遅いってほんと、武田も夏樹も何やってるんだろう」
そう言って、机に置いていたスマホに手を伸ばす会長。
「もう一度二人に電話してみるから、矢野くん少し待っててね」
「あ、はい。分かりました」
スマホ片手に生徒会室をあとにする。
会長、いつも対応が落ち着いてるんだよなぁ。動じないっていうか大人っぽくて、何事にもスマートっていうか。慌てるところとか見たことない。ていうか、先輩って慌てたりするのかな?
武田先輩と同級生とは思えない。
「……なにして待とう」
しーんと静まり返り、チッチッチッと秒針の音がやけに大きく聞こえる。
「うーん……みんなまだかなぁ」
ドアへ目を向けるけれど、一向に誰かが現れる気配はない。
──ふわりっ
開けられた窓からは、心地よい風がふわりと入り込み、睡魔が俺を襲う。
「ふあーあ……」
やばい、眠たい。朝、早かったからかな。
一人で待つってなにもすることなくて、ぼーっとしちゃう。せめて同級生でもいたら話し相手になるのに。一人だと話す相手もいないから……
ふあーあ。もう一度あくびが出る。
会長が戻って来る気配もまだないし。
……少しくらいいいかな。
睡魔に負けた俺は、机の上に上半身をつけると、腕で枕を作って目を閉じる。
──チッチッチッ…
初めは大きく聞こえていた秒針の音も、いつのまにか聞こえなくなっていた。