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「っしゃー! テスト終わりっ!」

 テストが全て終わった翌日。柳木は肩の荷が降りたのかすごく元気になった。

「鳥羽、矢野。また明日なー!」

 ニカッと笑いながら手を振ると、柳木は部活へと向かった。
 その姿を見て、鳥羽は「元気だなぁ」と呆れたように笑う。

 まるで嵐のような人だ、と思った俺も、

「ほんとだね」

 と、苦笑いする。

「そういえば矢野、最近あれしてないんじゃない?」

 〝あれ〟とは女装のことで。

「え? あー…まぁね。テスト期間中ってこともあったし」
「今までなら可愛いとか女顔指摘されるとすぐ休みの日にしてたのに」

 たしかに、そうだ。頻繁とまではいかないけれど、女顔を指摘されると自信なくして女装してたけど。中学生の頃は特に。

 もしかして先輩のおかげ……?

 なんて考えた矢先、

「先輩と仲良くなってからじゃない?」

 たった今俺が思ったのと同じことを言われるものだから、

「……! なっ、に言って……!」

 過剰反応した俺は、ぶわあっと顔が熱くなる。

「いやだってさ、最近あんまり聞かないから。女装はもうやめたのかなぁと思って」
「やめては、ないけど……」
「けど?」
「生徒会に入ってからちょっと忙しかったっていうか……」
「あー、まぁたしかに忙しそうだよね」

 べつに、嘘はついていない。忙しかったってのは本当だし。
 それに女装をやめたわけでもない。

「……多分、まだすると思う」

 俺が自信つくまで。顔がコンプレックスだと思っている間は。

「ふーんそっかぁ」
「う、うん」

 理解がなければ軽蔑しかされないから他の人には絶対に言えない。その代わり、鳥羽とこういう話ができるのはとてもありがたい。

「でもさ、そのたびに先輩呼ばなきゃいけないじゃん」
「なっ、なんで……」
「だって俺以外の前でしないでって言われたんでしょ?」
「あ、ああ、うん……」

 言われた。でも、それを周りの口からそれを聞かされると、なんだか本当に独占欲みたいで。

 少しだけ、どきどきしていると。

「先輩、矢野のこと女子だと思ってるんじゃない?」

 なんて急に言い出すものだから、

「はっ? えっ? なんで……?!」

 首がもげそうなほど、鳥羽の方を勢いよく見た。

 俺のことを先輩が女子だと思って?

 いやそんなことは絶対にないと思うけど。

「それだけ矢野の女装姿が可愛かったんじゃないの」

 中学生の頃、嫌というほど言われてきた言葉。

 けれど、それを言われたって。

「……可愛いとか嬉しくないし」

 むしろ嫌気がさして、コンプレックスになったほとだ。

 それなのに、どうして。