「あのさ、柳木。鳥羽の言うこといちいち気にしてたらテスト勉強なんてできないよ」
「だってさあ、気になるじゃん。なんて言ったのか」
仕方がない。鳥羽が教えるつもりがないなら俺が教えよう。
「うるさいやつって言ったんだよ、柳木のことを」
「え? どういうこと」
「だから、さっきの英語はうるさいやつって言ってたの」
そう言うと、一瞬ポカンとしたけれど、柳木は「は? マジ?」と言って鳥羽に視線を向ける。
「矢野、どうして教えるんだよ。せっかく俺が秘密にしてたのに」
と、鳥羽は不満そうに言う。
「だってさすがに可哀想じゃん。赤点取ったら補習一週間あるみたいだし」
「柳木にはそのくらいみっちり勉強する時間があった方がいいんだって」
なんて、まだからかい続けていると、
「鳥羽、お前ってやつはほんとに意地悪だよな!」
そう言って俺の背中に柳木は隠れ出した。
「意地悪じゃないって、友達の優しさだから」
「どこがだよ!」
俺の目の前に鳥羽がいて、俺の背後に柳木がいる。
「お願いだから俺を挟んで言い合い続けるのやめて。テスト勉強に集中できなくなる」
貴重な休み時間の五分がすでに無駄になっているのに、二人は気にするどころかさらに言い合いを続ける。
これ以上言っても無駄だと思って、俺は諦めて教科書を見つめた。