「じゃー行こっか」

 その言葉を聞いて緊張しながら席から立ち上がると、「ずりぃ! 俺の分も買って来てくれ!」と武田先輩が駄々をこねて夏樹先輩に詰め寄った。

 二人とも身長が高い。俺なんて170センチもないのに、先輩たち何なの……。どうやったらあんなに背が伸びるの。

「あー、はいはい。分かったから、タケそんなくっつくな」

 武田先輩を鬱陶しそうに引き剥がすと、

「そんな嫌な顔すんなよ! 傷つくだろ!」

 と、夏樹先輩に指をさしながら文句を言う。

「矢野くん、行こ」

 夏樹先輩はそれを無視して俺に話しかけるから後ろの方で武田先輩はぎゃーぎゃー騒ぎ立てていた。

「放置したままでいいんですか?」
「うん、どうせいつものことだから」

 けろりと笑って告げられたのだ。


 ***


「矢野くんは、何か飲む?」
「あ、俺、自分で……」
「ううんいいよ。何飲む?」

 ニコニコと笑う表情に圧を感じて、ここは断らない方がよさそうだと思った俺は。

「……じ、じゃあ、アイスティーで」

 控えめに声を落とすと「ん」と軽く微笑んで、自販機でお目当てのものを押した。

「はいこれ」
「あ、ありがとうございます」
「タケはどーしよっかなぁ……炭酸苦手って言ってたけど炭酸でいいか」

 ケラケラと笑いながらボタンを押す夏樹先輩は、すごく楽しそうに感じた。

「……武田先輩、炭酸苦手なんですか?」
「んー、そうだよ。なんか舌がピリピリするとか言ってた」

 ……炭酸はたしかにピリピリするけれど、苦手ってほどじゃないよな? でもそれは人それぞれか。

 自分のジュースを買ったあと、先輩はキャップを開けてひと口飲んだあと、

「で、本題はこっちなんだけど、この前のあれって矢野くんだよね」

 さらりと突きつけられた現実に肩が跳ねる。