……あっ、そういえば先輩、英語が苦手って言ってたっけ。しかも言い訳が、日本人なのに英語する意味なくない?って。英語苦手な人の言い訳の代表的なものを……

 今日、英語のテストあるのかな。

 先輩、ちゃんとテストできてるかなぁ……

 まだテスト一日目。明日も残りの教科がある。

 〝テストが終わればデート行こうね〟

 ──いやいやっ、なんで今先輩のメッセージの言葉が先輩の声で流れてくるわけ!

 べつに行くって決まったわけじゃないし、なんならあれから〝行かないです!〟って返事したし!

 俺は何を考えてるんだ! もうっ……

「矢野、なに慌ててるの?」

 ──鳥羽の声にハッとする。

「え?! あーううん! なんでもない」
「なんでもないわりには動きが怪しいけど」
「え!? いや、ほんとになにも……」

 先輩のこと考えると、すぐこれだ。

 冷静ではいられなくなる。

「ちょっと鳥羽! 矢野と話し込んでないで俺に英語教えてくれよ!」

 間に割って入った柳木は、かなり切迫詰まって見えた。

「柳木の英語より矢野の話が気になるんだけど」
「いーから! 矢野より俺だろ! 友達を見捨てんのか?!」
「……見捨ててもいいけど」
「やだやだ! 悪かったって!」

 両手を合わせてごめんのポーズをして見せる柳木。

「You're a noisy guy」

 そんな柳木に鳥羽が英語で一言。

 ……うるさいやつ?

「えっ……今、なんて?」

 柳木が尋ねると、「なんて言ったと思う?」と鳥羽は逆質問をする。

「分からないから聞いてんじゃん。早く教えろよ」
「えーどうしようかな」

 なんてせっかくの休み時間を無駄に使っているから、さすがの俺も苦笑い。