「なんで聞いてきた本人がそんなにダメージ受けてるみたいな顔してるの」
「や、だって……鳥羽が、その、肉体的とか過激的なこと言うから……」
「なに、過激的って。俺はただ一般論を述べたまで」
「一般論……」
てことは、世間の大半がそう思ってるってこと?
……じゃあ、先輩は?
もしも仮に先輩がそうだったとしたら、俺ともそういうことをしたいと思って──…
いやっ、やめやめ! そういうこと憶測だけで考えるのは良くない気がする! 変に意識すると、先輩とどうやって接したらいいか分からなくなるし……
「なに。もしかして誰かに好きとか言われたの?」
ニヤニヤしながら俺に尋ねる鳥羽に、「なっ!」一瞬反応してしまったあと、
「そ、そんなわけないでしょ……! ただ、気になっただけ!」
「へぇ、気になっただけ」
「そ、そうだよ! それだけだから!」
否定をすればするほど怪しくなる。
──〝好きな子だから〟
また、先輩の声が言葉が頭の中でリピートされて、顔がプシューっと熱くなる。
耳も、手も、首も、全身から熱を帯びている。
「それだけ……ねえ」
俺を見る鳥羽は、フッと笑みを漏らす。
まるで全てお見通しだと言わんばかりの表情だ。
「もう……やっぱりさっきの話忘れて、今すぐ」
「それは無理。矢野から好きってなにとか聞かれたの初めてだし」
〝好き〟って言葉を聞くたびに、先輩の言葉を思い出してしまう。
そのせいでボンッと顔から炎が出るように熱く。
「あーもうっ……!」
そして、羞恥心に駆られる俺は悶えるように机に項垂れる。
「なに。どうしたの?」
「今後好きっていうの一切禁止」
「なんで?」
理由は絶対言いたくなくて。
「とにかくダメなものはダメだから!」
釘を刺したあと、机に俯いて顔を隠した。
鳥羽に聞くのが間違いだったのかも。もっと他の人でからかわないような人……いやでも、誰に聞いても何か誤解されそうでやだなぁ。
ていうか、そもそも先輩だって俺のことが好きだったわけじゃないかもしれない。ただ、あのときは俺のことを庇ってくれただけだよね……うん、きっとそうだ!
俺が過剰に反応することじゃない。
もう忘れよう、うん、それがいい。