「あっそ。でもさ、お前好きな子いるんだったらもうちょい自重しろよな」
「なんで?」
「あんまり矢野と仲良すぎたら勘違いされるぞ」

 と、武田先輩が言っているのが聞こえた。

 この前、駅前にいた女の子は女装していた俺だし、それは夏樹先輩も知っているけれど。

「そうだな、気をつける」

 夏樹先輩の声が聞こえた。

 直後、先輩と目が合って、微笑まれる。

 まるで二人だけしか分からないやりとりのようで、ドキッとする。

「夏樹、こっち持ってくれ」
「おー」

 また何事もなかったかのように作業を続ける夏樹先輩。

「……今の、何なんだ」

 俺は、小さな声でボソッと呟いた。