体育祭は、あっという間に終わった。
 そして今年優勝したのは、三年だった。

 そして今、十五時半過ぎ。生徒会は体育祭の片付けと校内の確認作業に追われていた。

「あー、負けたのは悔しいが楽しかったなぁ!」

 武田先輩がテント片付けをする傍ら俺に話しかける。
 どうやらよっぽど楽しかったらしい。

「ですね」

 俺は相槌を打ちながら手は止めない。

 まだ話し足りない武田先輩は、近くいた夏樹先輩に話しかける。

「つーか、夏樹が矢野呼んだときはびっくりしたなぁ!」

 そんな会話が聞こえてドキッとした俺は、気になって聞き耳を立てる。

「なんでびっくり?」
「てっきりお題に好きな子とか書いてあんのかと思って!」
「……それ去年のお題だろ」
「まぁそーなんだけどさぁ、男子校っつったら定番っつーか! そういうのあった方が盛り上がるって実行委員も分かってんじゃね」
「まあ、そうかもな」

 へえ、やっぱりそういうお題があった方が盛り上がるんだ。
 確かに、夏樹先輩が来たときはお題が『好きな子』かと思った。いや、それで呼ばれても困るけれど、そうじゃなくてもびっくりはしたし。
 一番仲良いと思われてるのは普通に嬉しい。
 でも、ほんとに後輩としてなのだろうか?

 結局、あれから夏樹先輩には聞けていない。〝好きな子〟と言ったのが冗談だったのかどうか。

「それにしてもお前、矢野のことすげー可愛がってるよな」
「……そうだっけ」
「ああ。て、自分で気づいてねーの?」
「あー……うん、まあ」