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 夏休みが終わって、早くも一週間が過ぎた。

「生徒会ってもっと楽かと思ってたのにやる事多すぎるじゃん」

 放課後、十六時過ぎ。生徒会の雑務は毎日のようにある。日によって量は増減するが、体育祭や文化祭などイベント等を目前にすると生徒会の雑務は多くなる。

「口ばっかり動かしてないで手も動かして」

 山崎昴(やまさきすばる)先輩は、基本穏やかで怒ったことなんて一度もない。二年生で成績優秀でスポーツ万能な完璧といっても過言ではない人。

「山崎も手伝ってくれよー」

 副会長の武田尚弥(たけだなおや)先輩。雑務をこなすよりはるかにおしゃべりの方が多くて、面倒くさがりで。どうして副会長になったんだろうってたまに思う。

「おい、タケ。あんまり山﨑困らせるなって」

 そして二人目の副会長の夏樹孝明(なつきたかあき)先輩。何度か先生に髪色で注意を受けているらしいが、髪が茶色いのは地毛らしい。そしてチャラそうに見えるが根は真面目で、優しくて、よく笑う人だ。

 他にも書記と会計と人数を合わせると七人にもなる。その中で俺は書記をやっている。主に話し合いでの記入等を任されている。

 男子校は当然男だけで、女子は一人もいない。
 それなのに数日前に夏樹先輩に女装を見られた俺。

 あれから気まずくて俺からは一言も話せてない。
 危機的状況の俺は、目の前のプリントどころではなくなって、シャープペンを握りしめたまま、頭を抱える。

「矢野くん?」

 すると、目の前から声が聞こえた。

 それと同時に頭に触れた、何か。

 ハッとして顔を上げると、夏樹先輩の伸ばしたままになっている腕が視界に映り込む。
 だから今、俺の頭に触れているのは間違いなく先輩の手のひらだと気づく。

「ぼーっとしてるけど、どうかした?」

 あの日と同じ、真っ直ぐ向けられる瞳。

 一度も逸れることはなく、俺を見据える。

「えっ、あ、いえ……」

 俺は、慌てて目を逸らす。

 どうしよう、俺。まともに夏樹先輩のこと見れないし話せない。このままあと一年も生徒会仲間として過ごさないといけないのか? そんなの羞恥でしかないってのに……!