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ある日の一限目、体育祭の種目を決める話し合いが開かれる。
「もうすぐ体育祭があるので出場する種目を決めていきたいと思います。まずは種目書くからちょっと時間ちょうだい」
そう言うと、委員長はチョークを持つ。その傍らで副委員長は紙を見ながら種目名を読んでいた。
クラスメイトは、待ち時間をタダでは過ごさないらしい。その証拠にガヤガヤと話しだす。
「もうそんな時期なんだ。早いよね」
と、鳥羽が隣から声をかけてくる。
「あー、うん、たしかに。入学して今日まであっという間だった気がする」
入学して半年以上が過ぎた。
初めは、またからかわれたりするんじゃないかって緊張したけれど、想像していたよりもからかわれることは少なかった。
「俺さー、男子校に入ったのは失敗だったかなって思ってたんだけど、なんだかんだ楽しいよね」
「そうだね。男子だけだから気にせずふざけられるっていうか、クラスにもふざけてる人多いよね」
「まあな。女子がいたらカッコつけたりするけど、そういう必要がないっていうか、カッコ悪いところさらけ出せるっていうか、気が楽ではあるよな」
確かにそうかもしれない。共学校だと当然だけれど女子もいて、誰がかっこいいとか誰が好きとかの話題が上がっていた。だからこそ、かっこいい部類に入らない俺は違う意味で目立ってしまったのかもしれない。
「ただ、女子がいないから癒しがないっていうか、恋愛的なことがほとんどないから物足りないってのもあるよな」
「鳥羽は恋愛したいって思う?」
「そりゃあね。一度くらいは大恋愛してみたいって思うよ」
そう言ったあと、俺を見て、鳥羽は「その点、矢野は順調なんじゃないの」と呟いた。