「なあ、夏樹。あいつ俺にだけ酷くねえ? 夏樹からも何か言ってくれよ」

 今度は武田先輩は夏樹先輩に絡み出すが、

「事実を言ってるだけだからべつに酷くないんじゃない。さっきからタケ、ずっと口しか動かしてないし」

 夏樹先輩はフォローどころか目も合わさずに淡々と答えた。

「夏樹に一票」

 会長が笑いながらそんなことを言うと、そばに座っていた同級生も「俺も」と手を上げていた。

「あ、じゃあ、俺も夏樹先輩に一票です」

 慌てて俺も手を上げると、「なんだとー!」と武田先輩が近づいてくる。

「日頃から可愛がってやってたのに。この裏切りめ!」

 と、俺の髪をめちゃくちゃに撫でだすから、慌てて立ち上がり距離を取る。

「べつに可愛がってもらってません! てか何で俺だけなんですか! 他にも手上げてる人いましたよね?!」
「〝じゃあ〟って言って手上げただろ。じゃあって何だよ?! 俺は何かのついでか!?」
「面白そうな流れだったので乗ってみました」
「何だと、生意気なー!」

 腕を肩に回されてロックオンされた俺は、そのまま髪の毛をボサボサにされる。

「ほら、そういうところだよ武田。すぐ後輩に絡んだり面倒くさいことを頼もうとしたりするから先輩らしく見えないんだよ。信頼されたいなら口ばかり動かしてないで手を動かさないと」

 会長の一言により「ぐっ……」悔しそうにしていたが武田先輩は渋々、俺から腕を離して自分の席につくと、放置されっぱなしだった資料に目を通し出す。

 刻々と時間は過ぎ、時刻は午後十八時。

「会長、これ終わりました」

 俺が雑務を終えて提出に向かうと、会長は受け取って確認をする。
 会長が寝ている姿とか疲れてる姿を一度も見たことがない。それに誰よりも一番最後に帰るのに、朝は早く登校しているし、会長ってやっぱりすごいや。

「うん、矢野くんのまとめ方は上手だからとても見やすくていいと思う」
「ほんとですか? ありがとうございます」