はじめは、ただの先輩と後輩だった。
 けれど、生徒会という仲間になり少しずつ時間を共有して、お互いのことを知るようになって、絆が生まれていった。
 きっと俺は先輩じゃなきゃダメで、先輩も俺じゃなきゃダメで。そういうのを恋っていうのかもしれない。

「矢野くん」

 と、呼ばれて顔を上げる。先輩は少し腕の力を緩めて、

「俺と付き合ってほしい」

 先輩は、優しい眼差しで俺を見つめた。
 答えは、たったひとつしかなくて。

「はい、もちろんです!」

 俺が言うと、先輩は嬉しそうに笑って、また俺を抱きしめる。

「俺って世界一幸せ者かもしれない」

 なんて言って先輩が笑うから、

「これからもっと二人で楽しいこと嬉しいこと増やしましょう。てか、俺が先輩を幸せにします!」
「矢野くんて頼もしいよね。そういうとこほんと好き」

 耳元で先輩の笑う声が聞こえて、くすぐったくて、だけど嫌じゃなくて、むしろ心地よくて。

「俺だって先輩のこと好きです」

 ──放課後の教室で、そんなやりとりが行われていたのは、俺と先輩以外は知る由もなかった。