「だって生徒会は四月で引き継がれるんだろ? だったら二年生もあと少しで終わりじゃん」
「あー、ほんとだ。そうなるよな」
……うん、たしかにその通りだ。てことは、夏樹先輩とも頻繁に会えなくなる……ちょっと寂しくなるなぁ。
「……え?」
俺、今なんて……
先輩と会えなくなるのが寂しいって?
「矢野? どうした?」
鳥羽の声にハッとする。
「あ……な、なんでも、ない……」
あからさまに動揺する俺を見て、当然不審に思ったのか。
「なんでもないってわりには見えないけど」
「そうそう。だってなんか顔赤いし」
……顔、赤い……っ!
「ききききっ、気のせいじゃない?!」
──ピコンッ
「あ、矢野のスマホじゃね?」
柳木が俺のスマホを指さすから、視線はそこへ落ちる。
「それにしてもさぁ──…」
柳木と鳥羽は、話に夢中で俺のことなんかほったらかし。
よかった、助かった……。
でも、こんな時間に誰だろう。
【夏樹先輩:メッセージ一件】
えっ、うそ……。先輩から? なんだろう……。
【そっち今授業中? 俺ら班で自由行動してるところ】
メッセージと一緒に写真が送られる。
その写真を見て、思わず頬が緩む。
【今、休み時間です。修学旅行楽しそうでよかったです】
先輩の顔を見ると、なぜか不思議と安心してしまう。
【楽しいよ。すげー楽しい】
ひとつメッセージが送られていると、またピコンッと音が鳴る。
【でも、矢野くんに会えないの残念】
その言葉を見て、わずかに動揺していると、またメッセージが送られてくる。
【会えないかわりに少しだけ声聞きたい】
休み時間は残り五分。
だけど、俺は──。
「ごめん、ちょっと席外すね」
友達に断りを入れてから廊下を出る。
【いいですよ】
メッセージを送ると、すぐに着信が鳴った。
俺は緊張しながら画面をタップする。
「も、もしもし……」
『あ、矢野くんの声だ』
機械越しに聞こえる先輩の声は、いつもと変わらず柔らかくて優しい声だ。
『休み時間にゆっくりしてたところ急に無理言ってごめんね』
先輩に謝らせたくなくて、
「いえ、全然大丈夫です!」
と即座に答えた。
『今までほぼ毎日会ってたからさあ、急に会えなくなるとなんかちょっと調子狂うっていうか、矢野くんの声聞きたいなって思っちゃって。でも、声聞いたら今度は会いたくなっちゃった』