「そういえば再来週、俺たち修学旅行なんだよね」
「あ、三泊四日でしたっけ」
「ん? 矢野くんよく知ってるね」
「さっき会長が教えてくれたので」
「そっか」
先輩たちが学校にいないってはじめてだよな。しかも、四日も会えないのか。
それは少し寂しいかも……え? 俺なんで夏樹先輩に会えないからって……
「先輩は、修学旅行楽しみですか?」
自分の気持ちが分からなくてモヤモヤするので、会話を続けて気を紛らわせる。
「そうだね。すごい楽しみ。ただ、ちょっと寂しい部分もあるけど」
「何か心配事ですか?」
「矢野くんに会えなくなるから」
何の前触れもなくそんなことを言うから、思わず赤面してしまう。
そんな俺を見て先輩はまた笑った。
「なにか欲しいものあったりする?」
「い、いえ、特には……」
「なんでもいいの?」
「なんでもっていうか……先輩が選んでくれたものなら嬉しいです」
そう言うと、先輩はなぜか目を白黒させて固まる。
「……あの、先輩?」
「ああ、うん。なんでもない。分かった。楽しみにしててね」
寂しいって思う気持ちを、先輩に隠したまま俺は笑った。