***

「あれ、会長だけですか?」

 始業式もHRも終わって、生徒会室に行くと、そこには山崎先輩だけしかいなかった。

「あ、矢野くん。武田たちは今、課題終わってないからって先生に注意受けてるところだよ」

 ……たちってことは、夏樹先輩もかな。

「課題多かったんですか?」
「毎日少しずつしたら終わる量なんだけどね。あ、でも、夏樹の場合は課題を家に忘れただけなんだけど、問題は武田の方。クラスメイトの答えを写して楽しようとしてたの」

 ……え? 課題を丸写し?

「それって生徒会として大丈夫なんですか?」
「いやー、確実にアウトだろうね」
「で、ですよね……」
「ほんと武田にはいつも頭を悩ませるよ」

 会長も思わず苦笑い。

「確かに。それでよく……」

 そこまで言いかけてハッとした俺は口をつぐんだけれど、会長にそれは通用しなかったらしくて。

「副会長になれたなぁって?」
「あっ、いや……すみません!」
「俺もそう思うときあるから大丈夫だよ。面倒くさがりだし口悪いし生徒会の規則にも少し引っかかってるし少しでも楽しようって抜け道探すようなやつだもん」

 次々と辛辣な言葉が並べられている。

「でもまぁ武田もいいところはあるんだよ。武田、人脈は広くてああ見えて結構慕われてたりするからね。なにかと助かってる部分もあるんだ」

 呆れたように笑いながらもなにかと楽しそうに、「これ、あいつには内緒ね」と口元に人差し指を立てる会長は、いつもの背筋を伸ばしている生徒会長が抜けて見えた。

「ああ、そうそう。今日はまだやることそんなにないから矢野くん帰って大丈夫だよ」
「先輩はどうするんですか?」
「明日からまた忙しくなるだろうから、それの準備かな。あと再来週に備えて少しだけまとめたいこともあるから」
「再来週何かあるんですか?」
「修学旅行があるんだ。三泊四日なんだけど、その間矢野くんたち一年に任せることになるから困らないよう少し手を加えようと思ってね」