「早く課題写さなきゃならないんだって。鳥羽貸してよ!」
「仕方ないなあ。どれ?」
「とりあえず全部!」
「はぁ? なに、とりあえずって。とりあえずの使い方間違ってるけど」

 二人のやりとりに思わず俺は苦笑い。

「まぁまぁそれはいーじゃん。とにかく早く課題貸して! もうすぐ始業式始まっちゃうじゃん!」

 柳木が諌めるのは納得いかない様子の鳥羽だったけど、これ以上言い合っても無駄だと思ったのか課題全てを柳木に手渡す。

「サンキュー! 今度何か奢るから!」

 と楽しげな柳木に、

「期待しないで待ってる」

 呆れたご様子の鳥羽だった。

 それから柳木は、自分の席に座って黙々と課題を写し始めた。

「柳木、よかったの?」
「ん? …ああ、もういいよ。どうせ来年だって同じことの繰り返しだろうし。柳木にはもう期待してない」

 遠い目をしながら柳木を見る鳥羽の目は、呆れた様子だった。

「それより矢野、冬休みの間にあれしたの?」

 何事もなかったかのように話題が切り替わる。

「あー、いや、時間なくてできなかった」
「ふーんそうなんだ。残念」
「残念ってなに」
「んー? 今度あれしたら写真送ってもらおうと思って。で、SNSにアップしよーかなって。そしたらフォロワー稼げるかなって思ったんだけど」
「やめて! それ絶対なしだから!」
「なんで。べつに矢野ってバレるわけじゃないんだし」
「だとしても絶対に嫌だから!」

 いくら女装してるからといって、それが絶対にバレないという可能性はゼロじゃない。

 もしも仮にそれが学校の人にバレたら、たちまち俺はからかわれるはず。