小学生の頃から、とにかく自分に自信がなかった。

「矢野ってすっげぇ可愛い顔してるよな!」
「矢野くんって女の子より女の子みたい」

 クラスメイトに散々いじられた顔。そのため、自分の顔がコンプレックスになり、学校ではマスクをつけて過ごしていた。

 そんなとき姉が、『自分の顔を嫌いになるんじゃなくて武器にすればいい』と言った。そして、自分の服のお下がりをくれた。
 最初は女物の洋服を着ることに抵抗があったけれど、次第にそれも慣れてきた。

 街を歩く俺にたくさんの視線が向けられたとき、はじめて姉の言葉が理解できた気がした。

 俺が悩んでいるなんてことも知らずに、みんな言いたいことを散々言って、卒業したら綺麗さっぱり忘れてしまう。

 だから、俺は思った。

 ──『自分の顔を嫌いになるんじゃなくて武器にすればいい』

 絶対に見返してやるんだって!

 その日から俺の女装への追求が始まったんだ。