コロコロ変わる態度と表情についてけない自分がいた。一体どれが本当の顔なんだろう。謎の好奇心に支配されて、呆然と立ち尽くしてたけど。
「さーて。仕事やる気失せちゃった。帰ろ」
「えっ!?」
今までの流れから、これからもっと口論をけしかけてくる気がしたのに。七瀬は俺の横を通り過ぎて、さっさと廊下に出てしまった。
「オラ、さっさと出ろよ。鍵かけんだから」
「あ、あぁ……?」
仕方なく言われるまま、部屋を出た。振り返って見ると、
「あ、ここ生徒会室だったんだ」
「今さら? 目ん玉ついてる?」
七瀬は心底呆れた様子でため息をつく。
さっきは勢いのまま入ったから、確認する余裕なんてなかったんだ。それをこいつは……。
「しょうがねえだろ。てかお前口悪すぎ! そんなんでよく会長に選ばれたな!」
「実力主義で選ばれただけだけど。俺より能力ある奴がこの学校にはいなかったんだろうな」
鍵を回し、七瀬は歩き出した。智紀もその後をついていく。

「学校は勉強と部活と委員会のみ専念すればいい。従って恋愛をする必要はなく、むしろ著しく学業を妨げるものと判断して……全ての権限を乱用して俺が叩き潰す」
「権限は乱用すんなよ! 最低過ぎるだろ!」

慌ててツッコむけど、彼は恋愛の二文字には反吐が出ると言った。
男同士の恋愛が許せない、と言う。
……でもそれって所謂ヒガミじゃないのか。
下へ続く階段が見えたとき、七瀬は足を止めた。
「あと俺は親切心でやってるから。言わばボランティア活動なんだ。やめる気はない」
誰もいない廊下で、気持ち悪いぐらい声だけが響く。

胸の中で何かが暴れた。実際、この学校の同性愛者達の為に俺が頑張る必要なんてない。ないけど……。何か、何としてもこいつの邪魔をしたい。
その為には負けられないから。

「お前もう自分じゃ止まれないみたいだから、俺が止めるてやるよ。その、ありがた迷惑なボランティアを」

とても自然に、宣戦布告をしてしまった。
彼はそれに大して驚きもせず、淡々と答えた。
「勝手にどうぞ」
七瀬は背中を向けて先を歩く。
「口先だけで終わんないように頑張れよ。俺、そういう奴本気で嫌いだから」
忌々しく吐き捨てる、その威圧だけは何か凄まじかった。顔だけならむしろ目の保養ぐらいなのになぁ。