ジュースぐらいで大袈裟だけど、智紀はこういう奴だ。些細なことにも一喜一憂して、大騒ぎする。うるさくてめんどくさい。でもそういうところが好きだ。
彼はいつも笑っている。そのせいか、一緒にいると不思議と楽しくなってくる。良い意味で周りに影響を与えられる奴だ。
密かに憧れて、尊敬している。自分もいつか彼のようになりたい。一体何年先の話か分からなくて焦るけど。
「智紀。俺やりたいことがある。……今まで別れさせてきた奴らに償いたいんだ。許してもらえるとは思えないけど、せめて一言謝りたい」
人を傷つけてきたことに対する贖罪。これだけはちゃんと視線を交えて話した。彼もなにか察したのか、ペットボトルのキャップをしめて前に出る。
「卒業までに、ひとりひとり回って謝ろうと思う。それはお前に迷惑かけないようにやってくよ。一応、それだけ伝えておきたくて……」
「何言ってんだよ、水くさいな。そういうことならもちろん、俺も手伝うぜ! お前がしてきたことは俺にも関係がある。だから、最後まで付き合うよ」
智紀は一切の迷いなく、夕夏の背中を叩いた。
「っていうか偉いなぁ、見直したよ。まさかそんなに反省してるとは知らなかった!」
「ははっ、何にも偉くない。当たり前のことだよ。でも、そんな反省してますアピールすらおこがましいっていうか、虫がいいっていうか……真弘にも言われたけど、俺って本当クズで、自分勝手だ」
「あぁ。それは初めて会った日から知ってる! 今に始まったことじゃないから気にすんな!」
智紀の笑顔は眩しい。そして口から出る言葉は殺傷力がありすぎて、耳が痛い。
「夕夏は……償いどころか、もしかしたら今も人の恋路を邪魔して、誰かに恨まれてたかもしれない。そう考えたらすごい進歩じゃない? お前はちゃんと、良い方に変わってるよ」
「そうかな……」
「そう。お前の頑張りに誰も気付かなかったとしても、俺だけはお前を見てる。良いことも悪いことも、絶対目をそらさないから……それを忘れんなよ」