耳を劈くような鋭い声が、胸の奥まで突き刺さる。彼の叫びがそのまま浸透していくようだった。
彼の痛みがそのまま自分に伝わってくる。全てを理解してやることなんてできないと分かってるけど……それでも、酷く息苦しい。
「騙されてるかもしれない……確かに、そうだな。だとしても、可能性の話だろ。皆が皆そうだったら、それこそ誰も恋人なんていないよ」
「あぁ、そうかもな。その考えでいくと俺はたまたま運が悪かったんだ。たまたま、悪い奴らにつかまってレイプされかけた!」
さっきよりずっと大きな声で夕夏は吐き捨てる。混乱している。多分、もう周りは見えていない。
今までたまりにたまった想いをぶちまける様に、俺に訴えていた。
「たった一回っ……なのに、頭がおかしくなったよ。他に何も考えられないぐらい……っ!!」
「……怖かったんだな」
立ち上がって、夕夏の頭に手を置いた。
「そんな話聞いたら尚さらほっとけないじゃん。俺に嫌われたいから話したんだろーけど」
俯いてる彼の顔を無理やり上げさせる。その顔は涙でぬれていた。
「たった一回だって、騙されたら信じられなくなるってのは分かるよ。俺も騙されんのはやだし、怖いし。人間不信になるかもしれない」
彼の、これまでにない弱々しい瞳に、こっちの声まで弱々しくなる。
「それが分かるから、俺も頑張るよ。好きになってもらえなくても、まずは信じてもらえるぐらい……お前の力になるから」