「とにかく、冗談なんかじゃない。一方的な告白で、お前は、その……迷惑かもしれないけど」
これだけはハッキリ伝えなきゃいけない。だからちゃんと目を見て伝えた。夕夏の瞳は、探るような感じだったけど、気付けばいつかの灯火のように揺らいでいた。
「はあ……」
彼は視線を落とし、足下を見つめる。
「……まぁ超くだらない話なんだけど」
これまた思いついた様に、彼は語り出した。
「お前と同じで男が好きな奴がさ。同じ部活の、好きだった男の先輩から告白されたんだわ」
「ん? ……うん」
突如始まった話。加えて彼にしてはまどろっこしい説明に違和感を感じたけど、黙って話を聴く。
「元々その先輩に片思いしてた事もあって、そいつは喜んでOKしたわけだよ。世話になってたし、本当に優しかったから。でも」
「でも?」
「実は嘘で、カラダ目的だっつってね。その先輩と仲間が犯しにかかってきたわけ」
は?
それは、反応できなかった。話が急展開過ぎてついてけない。
「え? 何で」
「さぁ。……でも、嫌がらせもあったんだろうな。後で聞いたら、前から嫉妬してたらしいから。一年生のくせに、そいつは部活で選抜チームに入ってたから」
何だそれは……。
夕夏の話に、納得できる所と納得できない所がある。
「それで……その後は?」
「あぁ。どうだったかなぁ。でも何とか、その場は逃げたんだよな。でも環境はがらりと変わった。学校に行く以上、部活を辞めても逃げられなかった」
毎日毎日。
人前では嫌味を言われたり、人がいない場所ではやっぱり襲われかけたり。
部活だけじゃない、教室でも居場所がなくなった。学校という場所で、とことん孤立していった。
────でも誰にも言えなかった。誰か一人に打ち明けたところで打開できる状況じゃなかったから。
「さすがに色々きて、ほとんど学校に行けない時期もあった。そうすると友達だと思ってた奴らも心配すんじゃなくて、軽蔑するようになってくるんだ。授業サボるぐらいなら学校来んなっ、て。つーか早く辞めれば? って。それで、終わり。くっだらない話」
「……え」
「もうメンタル弱いから、一回休学したんだ。すぐ復帰したけどさ。それから頑張って……勉強して勉強して……今は学年一位の生徒会長。つまり、俺の話なんだけど」
長々とごめん、と彼は短く笑った。