言うことも表情も、全部が寂しかった。少し近付けたと思ったらまた離れてこうとする彼が、本当にもどかしい。
────何をそんなに怖がってんのか。
分かんないけど、教えてくれたら守るから。
「何回も言わせんなって。ここじゃ、お前が俺の最初の友達だ。俺はお前と一緒にいたいんだよ」
拳を強く握りしめて、勢いに任せた。声を張り上げた喉がちょっとだけ痛かったけど、気持ちはさっきよりも軽い。
「何だよそれ。気持ち悪いこと言うなって」
夕夏の返事は予想どおり素っ気なかったけど、さっきより笑顔が戻っていた。それが分かってホッとする。
良かった。ちょっとは元気出たみたいだ。
「とにかく、そういう事だから。一人で何か溜め込んだりすんなよ。悩み相談は、友達には必須だからな」
「お前に心配される様なことは何もねえよ。つうか俺よりも自分の成績の心配してろって」
「うるさいな。大丈夫だよ、赤点さえ取んなければ!」
思わず言い返すと、夕夏は吹き出した。それにつられて、何か色々ばかばかしくて笑ってしまった。
しばらく二人の笑い声が教室に響いた。
「……じゃ、本当に話終わりでいいよな? 俺これから生徒会の仕事あるから」
「あ、そっか。ごめんな」
「別に」
鞄をとって、夕夏はドアを開ける。
「智紀」
「ん?」
あれ、久しぶりに名前を呼んでもらえたような。
記憶を思い返してると、夕夏は少しだけ振り返った。
「……また明日」
すごい小さな声だったけど、彼はそう言って教室を出ていった。
「また……か」
初めて言われた別れの挨拶。普通の奴なら普通に交わすものなのに、夕夏の場合は普通じゃなくて。
それが、めちゃくちゃ嬉しく感じてしまった。