でも、冷静に考えろ。
友達がいないから何だってんだ。俺にはそんな繋がりはめんどくさいだけだ。欲しくもないし、独りの方が絶対向いてる。
二年前のあの日からずっと独りだった。自分から独りを選んだんだ。だから後悔してない。傷ついてもいない。
なのに、こいつに……智紀に指摘されたことに精神的ダメージを受けてる。謎の感情が沸き上がって、考えるより先に想いを吐き捨てた。
「……あぁ、そうだな。きっと俺より弥栄の方が優しく教えてくれるよ。だからさっさとあいつに乗り換えればいいじゃんか。俺なんかアンタにとっちゃ、テスト対策の道具でしかないんだろ?」
「えっ? いやいや、そんなこと……!」
感情のままにぶちまけてしまった。
また息苦しくなる。彼は驚いて否定してるけど、あえて無視した。同情じみた言い訳なんて聴きたくない。
挙動不審な智紀を置いて、夕夏は教室から飛び出した。
えぇ……っ!!
一方、取り残された智紀はフリーズしていた。
おかしい。おかしいよ、あれは。
────夕夏のやつ、確実にショックを受けてた。
いつもみたいに真っ赤になって怒りだす反応を期待してたのに、普通に真に受けるなんてどうした。熱あんのか。
おまけに「乗り換える」とか……恋人じゃないんだから、変な言い方しないでほしい。
思い出して、鳥肌が立った。
「はぁ……!」
あんな可愛い反応、反則だよな。ああいう所だけ誰よりも一番だと思う。もっと弄り倒したい。
追いかけて誤解を解きたかったけど、授業が終わると夕夏はさっさと帰ってしまった。なんて分かりやすい避け方をするんだ。
本当に扱いにくい子だよ。ブレない性格に敬意を表して、ザ・中二少年と命名しよう。
彼のことが気になるけど、放課後は約束どおり弥栄に勉強を教えてもらった。さすがに夕夏と変わらないくらい教え方が上手くて、“やっぱりこの人達はヤバい”という結論が纏まる。
「弥栄、本当にありがとな。しかもめちゃくちゃ急なのに」
「何言ってんの、困った時はお互い様だろ」
「お、おぉ!」
出ました、イケメン発言。
イケメンが言うと特に決まるから困る。
あと、彼とは何だか気が合う。帰りに近くのファミレスに寄ってくことにした。