「須賀君だっけ。俺は七瀬。よろしくね」
「よろしく。あぁ、智紀でいいよ」
七瀬は、とにかくできた奴だった。
周りと比較しても大人びて、落ち着いた雰囲気。優しい声にわかりやすい言葉。さらに聞けば生徒会長だとか。才色兼備な優等生はこの世に実在するらしい。そこにひたすら感激する。
「昼、焼きそばパンだけで良かったの?」
「あぁ、今日はあんま腹減ってないんだ。全然動いてないし!」
昼飯を買った後、彼と二人で廊下を歩く。
「そうだ、智紀って彼女いるの? 前は共学だったんでしょ」
「う……それが前は部活に専念しててさ。告白されても、悪いけど断ってたんだ。引退するまではって思って」
「そっか……。それで転校じゃ残念だったね。でも出会いは学校だけじゃないから」
彼は袋からコーヒー牛乳を出して俺に手渡した。
「元気出して。智紀なら絶対、すぐに彼女つくれるよ」
……!
「……ありがと」
コーヒーを受け取り、智紀は恭しくお礼を言った。
優しい奴だな。俺が思ってるより、多分ずっと優しい。
第一印象で色々思ってすいません。
だって漫画なんか見てると、生徒会長って大抵プライドの塊でふんぞり返ってるクソ野郎だから。なんて偏見と先入観で色々思ってすいません。
でも何か少しだけ、……悲しそうな顔したような。気のせいかな。
「……あ、そういえばさ! ここ男子校じゃん? やっぱアレ多いの? ほら、言いづらいけど……ゲイ、みたいな」
「え? あぁ。……まぁ」
七瀬は少し考え込むように俯いた。彼の反応から察すると、やはり朝の光景は珍しくないみたいだ。
「やっぱり? 実は俺、今朝変なこと話してる奴ら見つけて軽くビビったんだ」
笑いながら言うと、彼はさっきとはまるで違う、鋭い目付きに変わった。
「へぇ。その人達、誰だかわかる?」
「えっ」
何だ?
何か、ちょっとだけ危ない目をしてる。急にどうしたんだろう。
「いや、誰なのかは全然。だって俺まだお前以外知ってる奴いないもん。でも二組の康太……君がどうこう言ってたっけ」
「OK、ありがとう。俺ちょっと用事できたからさ、先に教室に戻ってて。道覚えてるよね?」
「えっ。あ、うん」
「じゃあまた」
突拍子もなく、彼は颯爽とどこかへ行ってしまった。あれれ。
やっぱ、ちょっと変わった子だなぁ……。