彼らのことを想い、息切れしながら叫んだ。ところが、
「ふん。それはそれで、自分の愚行を悔やむ立派な材料になるだろ。男と付き合ったのがそもそもの間違いだって気付くからさ」
夕加は悪びれないどころか、こんなことを言ってる。
「……本当に。お前、そのうち苛めた奴らに復讐されかねないぞ」
「上等だよ。文句あんなら正面から来てくれた方が助かる。こっちから捜す手間が省けるからな」
そう、普通に笑い飛ばしてるけど。真面目に考えた方がいいんじゃないのかね……。

智紀の心配をよそに、夕夏は途端に眉を寄せて舌打ちした。

「つーかそれより、お前のせいで有耶無耶になったじゃんか。あのままじゃ別れない可能性大」
「だ、か、ら!! もういいだろ!? これ以上追い詰めたらホントに駄目だ! まだ二年なんだし、今のクラスで一年過ごすんだから!」

本当は俺も、もっとスムーズに止めるつもりだったんだけど……予想以上にこいつの攻めるペースが速くて呆然としちゃったからなぁ。
今度はもっと速くに行動しなきゃ。
「それとさ、何情報か知らないけど確信もなく相手を脅すのはやめろよ。もう腐るほど言ってるけど、もっと平和に、話し合いだけで解決しなさい」
というか本当は、別れさせる様な真似をしてほしくない。
「だから、話し合いで納得できる様な奴らなら実力行使してない。ってゆーか」
夕夏は突然立ち止まると、俺の横スレスレの壁を思いきり蹴った。

「前に言ったよな? 説教すんな、付き纏うな、俺の奉仕活動の邪魔をすんな。──って」
「……っ!!」
「今思い出したみたいな顔すんな!!」

夕夏はガチギレしてるけど……いや、実際今思い出した。過去のことすぎて忘れてた。
それに今は、単純に怒りの矛先を俺に向けてるだけに見えるから納得いかない。どうやって返そうかな。
「何か言えよ」
夕夏は威圧をかけながら脚をどけると、今度は手を壁についた。
「そうだなぁ……お前がカップルを見ると潰したくなるのと一緒で、俺もお前を見ると思わず邪魔したくなるんだ。もはや生理現象に近い」
「喧嘩売ってんの?」
「だってさ、俺ヒマなんだよ。部活も辞めちゃったし」
オーバーに背伸びして、無防備に立ち尽くしてる夕夏の肩を押した。
「だからさ、せっかくなら一緒に遊ぼうぜ。俺ら友達だろ?」