「お前って笑えるぐらい単純。汚いことはなーんも知らないんだな」

夕夏は一呼吸置いて、軽い足取りで長い階段を降りていく。その様子は子どもみたいだ。
「掘られてもそんなあまっちょろいこと言ってられっかな?」
「だ、だから怖いこと言うな!」
でも、やっぱり普通じゃない。いちいち脅す様なことを言って、人が悪すぎる。さっきまでの弱々しくも可愛らしい態度はどこへ行ってしまったのか。

てゆーか、むしろこいつこそ“そういう”目に合わせてみたい。……なんて、ちょっと想像してしまった。

夕夏が、他の男に抱かれるところを。
男同士って確か、後ろを使うんだよな。うーん、それは痛そう。俺は絶対ムリ。掘られるのはムリ。掘るのも……多分、ムリ。

でも、夕夏なら?
黙ってればマジで、男ということを忘れそうなほど綺麗だ。
その白い肌を汚して、艶のある髪を汗でぬらして、高い声で喘いだら。うん、意外と悪くない。いっそ直接いじめてみたい。
そしたら、そこらのモデルよりよっぽど見応えある……。
「わけないだろ!」
「急に何!?」
あまりに卑猥な妄想をしてしまい、戒めとして頭を壁に叩きつけた。
いかんいかん。俺にそんな趣味はない。そんな変態的嗜好はないんだ……!
今の下らない妄想は軽い皮肉みたいなもので、断じて自分の望みなんかじゃない。

でなきゃヤバすぎる!!

俺をドン引きした眼で見ている彼は確かに、二度見……いや、ガン見したくなるほどの美貌だけど。
俺はゲイじゃないから関係ない!
そう思うと気が楽になってきた。
「あははは! よーし、帰ろっと」
「いまごろショックで頭がどうかしてきたか。不憫だな……」
夕夏は気の毒そうに俺を遠目で見てる。
でも大丈夫だ。変に意識してるなんてことはない。
……多分!