「須賀君、これからよろしこ!」
「須賀って身長高いな。 こっちでもサッカー部入んの?」
「良かったら校内案内しようか?」

授業の進み方は、恐れていたほど速くなかった。
たまたまかもしれないけど、むしろ緩やかだ。それだけに時間が経つのも遅く感じた。ようやくひと息つける昼休みを迎え、気持ち的にはバンザイをして叫びたいぐらいだった。けどクラスメイトに机を囲まれ、身動きできない。一向に鳴り止まない須賀君コールにちょっと疲れてきてる。

話し掛けてくれるのは嬉しいけど、早く落ち着いてほしいな。何故かみんな目がキラキラしてる。
俺は普通のカッコなんだけど、ここはどうも真面目なタイプが多い。第一まで襟のボタンをしめてる奴もいた。

でもだらしないよりは良いな。安心するし、好感が持てる。

「ごめん、俺ちょっと売店行くよ。弁当持ってきてないんだ……!」

しかし、逃げねば。今逃げないと昼飯にありつけない。
謝罪のポーズをとりつつ席を立ってドアの方を向いた。
すると、廊下側の席に見覚えのある生徒が座っていた。ちょっとの間見つめてしまったせいか、向こうもこっちに気付いたようだ。軽く頭を下げてる。

朝、俺が転びそうになった時に助けてくれた少年だ。……同じクラスだったのか。
不思議な話、少し嬉しくなった。
「あっ、そうだ! 売店まで案内してやんなよー、七瀬。どうせお前も買いに行くんだろ?」
「……あぁ」
七瀬と呼ばれた少年は、近くの生徒に言われるとすぐに察したようで、立ち上がった。
「売店の場所、まだ分からないでしょ? 一緒に行こうよ」
「あ……ありがとう!」
整った顔の、整った笑顔。感じが良いし、女ならすぐに惚れてしまいそう。
でもちょっと違和感を覚えた。本当に、かなり失礼な話なんだけど。

この笑顔……何かものすごく作ってる気がした。