どれくらい走っただろうか。
 私は空も見えない暗い森の中にいた。森を進んでいるうちに、不自然なものが出てきた。

石造りの壁のようなもの。
近づいて見ると、壁は首をほぼ直角に見上げないと一番上が見えないほどの高さで、石が隙間なく埋められていた。

 壁の周辺を歩いてみると、門があった。
 門と言っても、壁に木製の向こうの見えないドアついているだけのものだが。
 ドアに耳を当て、向こうの音が聞こえるか試してみたがドアが厚いのか向こうが静かなだけなのかそれともその両方なのかはわからないが何も聞こえなかった。

 もう体力が底をつきかけていたので一か八か私はドアを押した。
 力が入らないからか、体重を乗せて押しても重いと感じた。
 急に足がぐらついて前に進み出した時、視界が一瞬で光に埋まり、私は思わず目を閉じた。
 再び目を開けたその時、鮮やかな色が世界を彩った。
 花や木々、カラフルな服を身にまとい走り回る子供たち…

 私は思わず手を伸ばし、近づこうとしたが、体がいうことを聞かず私は倒れ、意識はとんでしまった。
――――――――――――
「可哀想に…向こうの世界から逃げてきたんですかね…」

知らない声が私の心配をした。

「服がボロボロだ…辛かったろうにあっちの世界でたくさん傷ついたんだろう」

 おかしいな…服は少しは汚れているとは思うがどこかに引っ掛けたりはしていないはずなのに。
 そう言えば、なぜ人の声が聞こえるのだろう。そう思って重たい目を開き、体を起こすと、知らない部屋のベッドにいて、周りには大人がたくさんいた。

 すると、大人の中で白衣を着た落ち着いた感じの男性が近づいてきて微笑み、

「初めまして。僕はレミニセンス。ここの街の医師だ」

 街のお医者さん。とても頼りになりそうだったが、それ以外は何もわからなかった。
逆にそれ以外の情報は聞いてはいけないのかもしれない。

 恐るおそる私は、
「こ、ここはどんなところなんですか」
とても弱々しく、消えそうな声だった。

レミニセンスさんははっとして、
「すまない。不安にさせてしまったね。ここは言葉と心が人と共に生きる街」
言葉と心が人と共に生きる街。