「…俺に会いたくなかったってことか?」
「は、遥風?」
「見舞いも断られる恋人って、なに」
「ご、ごめん! それはあの、俺が勝手に気まずくなってて、それで…」
「会いたくなかったってことだろ? 愛想尽かしたんじゃねーのかよ」

語気が強くなる。柊はベッドから降り、首を横に振った。

「違う! それはない、絶対にない! 遥風のことは好き。大好き。 でも、だから、自分の心の狭さに嫌気が差した」
「……中野のことか」
「…告白されたって遥風に聞いた時、ほらやっぱりって、最初から友達になんてならなきゃ良かったのにって、思っちゃった。嫌でしょ? こんな面倒くさい恋人」

……なんだ。そんなこと。
そう思ってしまうくらいには、俺にとって大した問題ではない。

「おまえが面倒くさいのなんて、今に始まったことじゃねーだろ。すぐ嫉妬するし、俺が告られたこと何故か全部知ってるストーカーだし、独占欲の塊でしまいには噛み付いてくるやつだぞ」
「す、ストーカーは言い過ぎでは…」
「そんで、いつもスカした顔してるくせに実は余裕がない。俺がいつ離れていくんじゃないかって心配しすぎ」
「さっきからこれ、俺ディスられてるよね」

眉を下げた情けない面の柊に俺は歩み寄って、正面から彼を少し見上げた。