――もう隠すのは、辞めたらどうだ。

「……俺、が行く」
「あぁ、まぁ確かに、柊も雨谷なら彼女と同じくらい喜びそうだな」
「そうじゃなくて。 柊と付き合ってるの、俺、だから」

言った。言ってしまった。いや、これでいいんだ。
それに多分、この2人はそれを茶化したり笑ったりはしない。

とはいえ心臓が飛び出そうなくらい脈打ち、緊張でおかしくなりそうだ。

しばしの沈黙の後、口を開いたのは海堂だった。

「やっぱり、そうか。雨谷と柊は、ただの拾われた野良猫と飼い主には見えない時がある」

それに浅井がぷっと吹き出す。

「たしかに。言われてみれば納得だわ! 彼女できたとか言い出したの、ほぼ同時期だったしな」

2人が軽蔑したりするような人じゃないと分かってはいたけど、ほっとしてようやく体の力も抜ける。

「雨谷、柊とふたりきりもいいが、俺たちのことも忘れないでくれ」
「そうだぞ。あと、美形のイチャつきは眼福ものだけど、やり過ぎ厳禁で! 俺らの前ではほっこり見ていられる程度に留めてもらえると助かる」

なんとも優しい条件に、俺はふっと笑う。

「ありがとう、浅井、海堂。おまえらと友達になれてほんと良かったわ」
「うわ! 唐突のデレもやめろ! またファンが増えるぞ!」

騒がしい浅井とずっと真顔で冷静な海堂のアンバランスさがおかしくて心地よくてまた笑いが零れる。

この場に柊がいたら、どさくさに紛れて抱きつかれていたかもしれないと思うと、余計にくすりと笑えた。

早く柊に伝えたい。
今日こそは拒否られても突ってやろうと心に決めた。